無機および鉱物試料の分子構造解析
ED2022-08
XtaLAB Synergy-ED および日本電子SEM-EDSによる無機および鉱物試料の分子構造解析

XtaLAB Synergy-EDは、微小結晶の電子回折図形の取得に最適化された電子回折装置です。無機および鉱物などの粉末試料を、そのままの状態で分子構造解析を行うことが可能です。さらに日本電子のエネルギー分散形X線分析装置 (Energy Dispersive X-ray Spectrometer, EDS) による詳細な元素分析と組み合わせることで、サブミクロン結晶のより最良な分子構造解析が可能です。
無機および鉱物試料粉末の電子回折構造解析
炭酸塩鉱物 : Calcite
Formula (repeating unit): CaCO3

硫酸塩鉱物 : Anhydrite (soluble)
Formula (repeating unit): CaSO4

リン酸塩鉱物 : Apatite
Formula (repeating unit): Ca5(PO4)3F

ケイ酸塩鉱物 : Kaolin (Kaolinite)
Formula (repeating unit): Al2O3・2SiO2・2H2O

酸化アルミニウム : Aluminium(III) oxide
Formula : Al2O3

チタン酸バリウム : Barium Titanate (IV)
Formula : BaTiO3

XtaLAB Synergy-EDでは、1 μm以下の粉末試料でも試料調整なしでそのまま電子回折測定可能です。試料の観察と電子回折測定は、3D ED/MicroED用ソフトウェア「CrysAlisPro for ED」で容易に進めることができます。上図は、無機および鉱物試料の微粒子をそのまま電子回折測定し、分子構造解析を行った結果です。
Kaolinite粘土粉末試料の分子構造解析
Kaolinite粘土粉末試料のXtaLAB Synergy-ED電子回折構造解析結果
Kaoliniteは、長石などが変質して生じた粘土鉱物です。層状ケイ酸塩鉱物の一つで、酸素が四面体配位したケイ素 (SiO4) の層 (a) と、酸素が八面体配位子したアルミニウム (AlO6) の層 (b) から構成されます。その結晶構造は、ケイ素四面体層 (Tetrahedral sheet) とアルミニウム八面体層 (Octahedral sheet) が互いに酸素を共有することで強く結合し、積層されたTO層から形成されます (c)。Kaolinite粘土鉱物の構造は、T層およびO層が1:1で構成される1:1型粘土鉱物であるKaolinグループの基本構造です。低コストで豊富な資源、高い機械的強度など、基材として使用するための多くの魅力的な要素を備え、工業用途から医療用品や化粧品など幅広い分野で使用されています。多様な機能を持った製品へ発展させるために、このような層状構造を正しく理解することは重要です。上図例におけるKaolinite (KGa-1b) は、Source Clay Minerals Repository (Purdue University, West Lafayette, IN) から提供されている試料です。本測定では、KGa-1bを精製せずにそのまま使用しました。試料粒子の主な粒径は2 μm以下です。本試料におけるTO層のユニットは、おおよそ7.5 Åであることがわかりました (d)。
Ultramarine粉末試料の分子構造解析
Ultramarine 粉末試料のXtaLAB Synergy-ED電子回折構造解析結果
Ultramarineは、lazuriteを基とするlapis lazuliを粉上に砕いた深い青色の顔料です。現在その多くは、Kaolin、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどから工業的に合成され、広く使用されています。Ultramarineは、方ソーダ石グループの鉱物であるゼオライトの骨格構造を基とし、ナトリウムと硫黄を含んで形成されます (e)。主なUltramarineの構成元素は、Na8–10Al6Si6O24S2–4の硫黄含有ケイ酸ナトリウムで、顔料の中でも最も複雑な構造を示します。また顔料の青色は、ソーダライトケージ内の硫黄に起因しています。上図では、SEM-EDS元素分析で検出された構成元素の情報を用いて、XtaLAB Synergy-ED電子回折分析結果の構造精密化を行いました。