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光照射により生成するラジカル: HOの測定 (スピントラップⅡ)

ER220009

ESRアプリケーションノート ER220008 で、イソプロピルアルコール (IPA) に光照射して生成するIPAラジカル (IPA) の照射波長依存性について、ご紹介しました。
今回は、過酸化物の光分解で生じるとされている hydroxyl radical (HO) について、 5,5-Dimethyl-1-pyrroline N-Oxide (DMPO) を使用した、波長依存性の検討結果を示します。
ここでは、過酸化物の代表例として過酸化水素 (H2O2) を用いて実験を行いました。HOとDMPOの反応は以下のようになります。形成されたDMPO-HO付加体は、ラジカル近傍のNおよびβ位のHの核スピンにより分裂しますが、これらの分裂幅が等しくなるためESRスペクトルは図1に示したように特徴のあるパターンとなります。

図1 DMPO-OHのESRスペクトル

図1 DMPO-OHのESRスペクトル

試料と測定条件

H2O2 (0.125 mM)、DMPO (25 mM) を含む水溶液を扁平セルに採取して測定しました。 ESR装置: JES-X320、測定磁場: 337.2±5 mT、変調磁場幅: 0.1 mT、掃引時間: 10 s
時定数: 0.01 s、マイクロ波出力: 4 mW、積算回数: 1、温度: 室温
紫外線照射装置: ES-13080UV2Aをキャビティに接続し、出力: 10%で光照射しながら測定しました。3種類のカットフィルター (F-①、F-②、F-③) をそれぞれセットして、照射波長を図2に示したように制限し、DMPO-OHの信号強度を全光照射の場合と比較しました。連続的に10 回測定し、初回および8~10 回目を暗条件としました。

図2 ES-13080UV2Aの発光スペクトルとフィルター透過光   

結果

光照射前にはMnマーカー以外の信号は観測されませんでした。
全てのケースでDMPO-OHが観測されましたが、320 nm~照射では極めて僅かな生成でした。例として、照射60 s後のスペクトルを図3に比較しました。

 

図3 照射波長ごとのDMPO-OH比較 (60s時)

図4 照射波長ごとのDMPO-OH経時変化

 

各スペクトルの低磁場側から2番目の信号強度を読み取り、それぞれの波長で照射した場合の経時変化を図4に示しました。全光照射では、初期の20s までは280~400 nm照射と同等のラジカル生成を示しましたが、その後は減少に転じました。それ以外のケースでは照射時間に伴い信号は増加しました。このように、全光照射ではアダクトを消失させる副反応が起きていることが示され、正しいHO生成を評価できない可能性があることが示唆されました。H2O2に光照射する系は多くの実験に利用されますが、適切なカットフィルターを併用して波長選択することが有用と考えられます。

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