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光照射により生成するラジカル: DMPO由来ラジカル (スピントラップ Ⅲ )

ER230007

ESRアプリケーションノートER220008, ER220009で、スピントラップ剤DMPOを用いた低分子ラジカル生成の照射波長依存性についてご紹介しました。DMPOは優れたスピントラップ剤ですが、開封後時間経過と共に変性しラジカルのトラップで生じる付加体とは異なるラジカルを生成する場合があります。このため、DMPOを使用する場合は試薬のバックグラウンド信号を確認することが重要です。
ここでは、光照射により生成するラジカルを観測する実験のため、DMPOのバックグラウンド信号の波長依存性を検討した結果を示します。

試料と測定条件

DMPO (25 mM) 水溶液を扁平セルに採取して測定しました。
測定条件は以下のとおりです。

ESR装置:JES-X320, 測定磁場:337.2±5 mT, 変調磁場幅:0.1 mT, 掃引時間:10 s, 時定数:0.01 s, マイクロ波出力:4 mW, 積算回数:1, 温度:室温紫外線照射装置: ES-13080UV2Aをキャビティに接続し、出力:10%で光照射しながら測定しました。
3種類のカットフィルター (F-①、F-②、F-③) をそれぞれセットして、照射波長を図1に示したように制限し、ESR信号を観測しました。連続的に7回測定し、初回のみ暗条件としました。

図1

図1 ES-13080UV2Aの発光スペクトルとフィルター透過光

結果

光照射前にはマーカー以外の信号は観測されませんでした。
全光照射の場合、照射30 s以降に特徴のある7本線が観測されました。
これは、γ位の2つの水素が等価に核スピンの影響を与えた結果、得られたパターンです1), 2)。この信号は、照射に伴い、経時的に増加しました。
280~400 nm照射では、照射40 s以降わずかなDMPO-OHが観測され、徐々に増加しました。このことは、光照射条件が異なった場合、更に大きなDMPO-OH信号が生成する可能性があることを示しているため、注意が必要です。
それ以外のケースでは信号は観測されませんでした。
図2に照射60 s後のスペクトルを比較しました。

DMPOがartifactのラジカル信号を与える詳細な反応は明らかではありませんが、ラジカルトラップによらずに変性が生じると予想されています (図3参照)。

図2

図2 照射波長ごとのDMPOバックグランド信号の比較 (60 s時)

図3-a

図3-a DMPO-OHのESRスペクトル

図3-b

図3-b DMPOXのESRスペクトル1)

図3

図3 DMPOの光変性物生成の予測

 

純度の低いDMPO製品にDMPO-OHが観測されることや、長期の保存中に同信号を与える物質が生成することも知られています。更に、今回示したように 光照射等の刺激によってDMPO-OHやDMPOXが生じるケースもある2)ため、レファレンス実験を行ってDMPOのバックグラウンド信号を確認することをお勧 めします。

参考文献

1) 藤田雄三 フリーラジカルの臨床 2, 39-49 1987年
2) 遠藤伸之ら ESR討論会講演要旨集 39th, 168-169, 2000年

 

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