異物によるESR 信号の線形変化
ER260002
異物として試料に混入した物質の ESR 信号の挙動
本来、製品に含まれていない物質は『異物』と呼ばれます。異物が製品に混入すると、その製品の劣化が進んだり、本来の性能を維持できなくなる場合があります。製品への異物の混入の可能性がある場合、以下のような対策が必要です。
製品に混入している異物を特定し、除去する、または混入を防ぐ方法を検討する。
製品中の異物が他の成分と化学反応し、製品が変質する場合には、その反応を防ぐ方法を検討する。
ESR 分析では、製品に異物として混入した微量の金属の識別や、ラジカルが関与する現象であれば調べることが可能です。物質中に成分として結合、または分散している遷移金属は無秩序に配向しているため、磁場に対する試料の角度を変えても ESR 信号は変化しません。しかし、異物として混入した遷移金属は微量であっても磁場に対して異方性を示すため、試料の角度を変えて測定することで ESR 信号に変化が見られます。
測定例
硫酸銅の粒子と、硫酸銅を超純水で希釈した試料をそれぞれ試料管に充填し、室温で試料管の方向を数回回転させて ESR 測定を行った結果を図1(A)、(B)に示します。図1(A)は、試料管を回転させて異なる方向で5回測定した結果です。物質中に異物として遷移金属が混入している場合、このように試料の角度に応じて ESR 信号の線形が変化します。図1(B)は、試料管を回転させて異なる方向で 3 回測定した結果です。溶媒に希釈され、物質中に均一に分散している場合には、このように試料の方向を変えても ESR 信号は変化しません。つまり、試料の ESR 信号の角度依存性を観測することで、異物が混入したものか、成分として均一に分散したものかを識別することが可能となります。

図1. 硫酸銅の ESR 信号
(A) 硫酸銅(CuSO4・5H2O)の粒子、(B) 硫酸銅(CuSO4・5H2O)の水溶液
