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固相マイクロ抽出(SPME)法によるカビ臭原因物質の分析

MSTips No. 393

MSTips No. 393

はじめに

JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

固相マイクロ抽出(SPME)法は、液体や固体試料から発生する揮発成分を抽出・濃縮する方法である。捕集した揮発成分が全量注入されるため高感度に測定することが可能であり、異臭分析等で幅広く使用されている。
「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法」では、カビ臭原因物質である2-メチルイソボルネオール(2-MIB)およびGeosminの分析方法として、別表27の2にSPME法が定められており、今回、標準試料による検量線の直線性および下限濃度における再現性について確認したのでその結果を報告する。

分析条件

SPMEによる前処理は多機能型オートサンプラー PAL RTC (CTC Analytics 社製 )を使用し、JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaにて測定を行った。サンプルは、塩化ナトリウム4.0g とミネラルウォーター10mLを量り入れたヘッドスペース用バイアルに、2-MIBとGeosminを1, 2, 5, 10, 20 ng/Lとなるよう添加し調製した。内部標準物質は2,4,6-トリクロロアニソール-d3を10ng/Lの濃度になるよう添加した。サンプルの測定条件をTable1に示す。

Table 1 Instrument Conditions.
Parameter Value
SPME SPME Fiber 50/30 um DVB/CAR/PDMS 2cm (Merck Inc. )
Incubation temperature 80°C
Incubation time 10 min
Extraction temperature 80°C
Extraction time 20 min
Desorb time 1 min
GC Column ZB-SemiVolatiles (Zebron Inc.), 20m x 0.18mm, 0.18μm film thickness
Column oven temperature 40°C (2.5min) – 15°C /min - 170°C - 40°C /min - 280°C (1.08min)
Injection mode Pulsed Splitless
Column Flow 1.2 mL/min, Constant flow
MS Ion source temperature 250°C
Interface temperature 250°C
Acquisition mode SIM
Monitor ion 2-MIB(m/z 95, 107, 108), Geosmin(m/z 112, 111, 125), 2,4,6-Trichloroanisole-d3(m/z 213, 215, 195)

結果

Figure 1に2-MIBおよびGeosminの検量線を示す。検量線の直線性は、2-MIB、Geosminともに決定係数 (r2) 0.999以上と良好な直線性が得られた。基準値の1/10の濃度である1ng/Lを試行回数n=5で連続測定し、定量値の変動係数 (Coefficient of Variation, C.V.と省略) を算出した。変動係数の測定結果をTable 3に示した。C.V.の値は2-MIB、Geosminともに10%以下であり、水質検査において要求される20%以下を満たす結果が得られている。

Figure 1  Calibration curve of 2-MIB and Geosmin.

Figure 1  Calibration curve of 2-MIB and Geosmin.
Table 2 Quantitative value and C.V. in 1ng/L(n=5).
2-MIB Geosmin
#1 #2 #3 #4 #5 #1 #2 #3 #4 #5
Quantitative value (ng/L) 1.05 1.04 1.18 1.06 1.01 1.07 1.08 1.14 1.09 1.05
Average (ng/L) 1.07 1.09
Accuracy (%) 6.8 8.6
C.V. (%) 2.6 3.0

1 ng/LのSIMクロマトグラムをFigure 2に示した。2-MIB、Geosiminともに十分な強度でピーク検出できていることが確認できた。

Figure 2 SIM chromatogram of 2-MIB and Geosmin at 1ng/L concentration.

Figure 2  SIM chromatogram of 2-MIB and Geosmin at 1ng/L concentration.

まとめ

SPME法を用いてカビ臭原因物質である2-MIBおよびGeosiminの分析を試みた。基準値の1/10の濃度である1 ng/Lまで十分検出できることが確認でき、検量線及び下限値の変動係数に関しても良好な結果が得られた。

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