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~塩析なし~窒素キャリアガスを使用したHS-GC-MS法による水中の塩化ビニルモノマー、1,4-ジオキサン、VOCの一斉分析

MSTips No.425

はじめに

JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta w/ MS-62071STRAP

HS-GC-MS法を用いた水中のVOC分析では、感度向上を目的として、飽和量の塩化ナトリウムを試料に添加し、VOCが気相に出やすくするための手法(→塩析)を行うことが一般的である。塩析の効果は成分によって異なるが、一般的に1,4-ジオキサンのような水溶性の高い成分を十分な感度で測定するためには、塩析を行うことは必須と考えられている。今回、代替キャリアガスとしてヘリウムより感度が低下する窒素を使用しつつ、塩析を行わずに1,4-ジオキサンを含むVOCを測定し、良好な再現性と検出感度を示すデータを得ることができたので報告する。

実験

測定はトラップ型ヘッドスペース装置MS-62071STRAPと、ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用した。測定対象とする揮発性有機化合物は、Table 1に示した26成分で、該当成分のうち1,4-ジオキサンは1、5、10、50、100µg/L、それ以外の成分は0.1、0.5、1、5、10µg/Lとなるように水溶液を調製し、測定試料とした。尚、各測定試料には、内部標準物質として、フルオロベンゼンおよびp-ブロモフルオロベンゼンを2µg/L、1,4-ジオキサン-d8を10µg/Lの濃度で添加した。

Table 1 Target VOC list (alphabetical order)

各測定試料(塩化ナトリウム添加なし)をTable 2に示した測定条件下で測定し、検量線を作成した。また、各種法規制において必要とされる定量下限として1,4-ジオキサンは5µg/L、それ以外のVOCは0.2µg/Lという濃度が設定されている。今回測定した測定試料のうち定量下限に近しい濃度として、1,4-ジオキサンは5µg/L、それ以外のVOCは0.1µg/Lの測定試料を試行回数n=5で連続測定し、定量値の変動係数(C.V.)を算出した。

Table 2 Measurement Condition

測定結果

各濃度の試料(1,4-ジオキサン:1、5、10、50、100µg/L、他VOC:0.1、0.5、1、5、10µg/L)を測定、作成した検量線をFigure 1に示した。また、各種法規制の定量下限に近しい測定試料(1,4-ジオキサンは5µg/L、それ以外のVOCは0.1µg/L)を5回連続測定した際の変動係数(C.V.)および検量線の相関係数をTable 3に示した。

Figure 1 Calibration curve of each VOC

Table 3 C.V. and Correlation coefficient (R) of each VOC at 0.1µg/L concentration and 1,4-Dioxane at 5µg/L concentration

検量線の相関係数については、全てのVOCで0.999以上であり、良好な直線性が得られている。また、定量下限付近の濃度における変動係数も6%以下となり、各種法規制が必要とする20%以下の値を十分に満たす結果が得られている。

下限値付近の測定試料(1,4-ジオキサンは5µg/L、それ以外のVOCは0.1µg/L)を5回連続測定した際の1回目における各VOCのSIMクロマトグラムをFigure 2に示した。最も感度を得るのが難しい成分の1,4-ジオキサンにおいても十分な強度でピークが検出されていることがわかる。

Figure 2 SIM chromatogram of each VOC at 0.1µg/L concentration and 1,4-Dioxane at 5µg/L concentration

塩析あり・なしの比較として5µg/L濃度における1,4-ジオキサンのSIMクロマトグラムをFigure 3に示した。塩析なしの場合、強度は低下するものの十分な感度が確認できた。 尚、塩析ありは、10mL当たり3gの塩化ナトリウムを添加した試料を塩析なしの測定と同じ装置コンディションで連続測定したクロマトグラムである。

Figure 3 SIM chromatogram of 1,4-Dioxane at 5µg/L concentration with salting-out and no salting-out

結論

窒素をキャリアガスに使用したHS-GC-MS法により塩析なしでVOC測定を試みた。結果、各種法規制に基づく水中VOCの測定に関して必要とされる定量下限濃度(1,4-ジオキサンは5µg/L、それ以外の成分は0.2µg/L)を十分に満たすことができた。本報告から代替キャリアガスによるHeの使用量削減と塩化ナトリウム添加の手間を省けることが確認できた。

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