HS-GC-MS法による水中の揮発性有機化合物(VOC)の高速分析
MSTips No.429
はじめに

JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta
水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法(→告示法)において、VOCは試料採取から24時間以内に試験することが明記されている。そのため、検体数が多い場合、分析サイクルの高速化が必要となる。今回、告示法の別表第15 ヘッドスペース(HS)-GC-MSによる一斉分析法に基づく水中VOCの分析について、1検体を20分以下で分析する方法を検討したので結果を報告する。
測定はHTA社製のGC用オートサンプラーHT2850Tと、ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用した。HT2850Tは、分析用途に応じてHSモード、液体注入モード、固相マイクロ抽出(SPME)モードに対応可能な、オールインワンGC用オートサンプラで、今回はHSモードを使用して測定を実施した。
実験
測定対象は、水道水質基準において規制されているVOCを含む25成分で、該当成分のうち1,4-ジオキサンは5, 25, 50, 250, 500 µg/L、それ以外の成分は0.1, 0.5, 1, 5, 10 µg/Lとなるように水溶液を調製し、測定試料とした。尚、各測定試料には、内部標準物質として、フルオロベンゼンおよびp-ブロモフルオロベンゼンを2.5 ppb、1,4-ジオキサン-d8を10 ppbの濃度で添加した。
各測定試料は、10mL当たり3gの塩化ナトリウムを添加した後、Table 1に示した測定条件下で測定し、検量線を作成した。また、下限濃度を試行回数n=5で連続測定し、定量値の変動係数(C.V.)を算出した。
Table 1. Measurement condition
結果
各試料を測定し、作成した検量線をFigure 1に、下限濃度のSIMクロマトグラムをFigure 2に示した。また、検量線の相関係数及び下限濃度を5回連続測定した際の変動係数(coefficient of variation, C.V.)をTable 2に示した。検量線の相関係数は、全ての成分で0.999以上であり、良好な直線性が得られている。また、下限濃度におけるC.V.も全ての成分で10%以下であり、水質検査において必要とされる20%を下回る結果が得られた。
結論
水質基準において規制されているVOCを含む25成分について、HS-GC-MS法を用いて1検体を20分以下で測定可能な条件で測定した結果、検量線作成において良好な直線性が得られ、下限濃度についても水質検査が要求する感度・再現性を得る事が可能であった。
Figure 1. Calibration curves of each compounds
Figure 2. SIM chromatograms of each compounds
Table 2. correlation coefficient(→R) & C.V. of each compounds