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Direct Insertion Probe(DIP)-MS/MSによるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びリン系酸化防止剤の迅速分析

MSTips No.457

はじめに

プラスチックなどの成形品には、用途に応じて数多くの添加剤が使用されている。一般的な分析方法としては、熱抽出-GC/MSや溶媒抽出と組み合わせたダイレクト分析が用いられている。特に、ダイレクト分析はGCカラムによる分離を必要としないため迅速に測定が行える。一方、含有されている添加剤成分が同時にイオン化するため、得られるマススペクトルは複雑化する傾向にあり、NISTライブラリー検索による解析ができない。そのため、精密質量と同位体パターンによる解析が必要となり、GC-QMSのDIP-MSなどのダイレクト分析による添加剤成分の確認は、目的成分が明確であっても困難となる。これに対し、DIP-MS/MSは目的成分由来の特定のイオンのみを選択してMS/MS測定できるため、プロダクトイオンスキャン測定から添加剤成分を確認することが可能となる。そこで、今回はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とリン系酸化防止剤を混合した試料を用いて、DIP-MS/MSによる添加剤成分の同定を試みたので報告する。

測定条件

測定は、DIPとガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQを使用した。測定対象の添加剤成分としては、塗料やプラスチックなどに使用されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤2-(2H-Benzotriazol-2-yl)-4,6-bis(1-methyl-1-phenylethyl)phenol、Phenol, 2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4,6-bis(1,1-dimethylpropyl)-、Drometrizoleとリン系酸化防止剤Phenol, 2,4-bis(1,1-dimethylethyl)-, phosphite (3:1)を測定対象とし、これらの成分が含まれる添加剤(スペクトラ・フォーラムより購入)をTHFで溶解し、1:1:1:1(v/v)で混合したモデル試料を測定に用いた。測定はTable1に示す条件にて実施した。

 

Table 1 Measurement condition

結果

DIP-MSによる測定結果

Fig. 1にモデル試料のマススペクトルを示す。2-(2H-Benzotriazol-2-yl)-4,6-bis(1-methyl-1-phenylethyl)phenolとPhenol, 2,4-bis(1,1-dimethylethyl)-, phosphite (3:1)は、強いピーク強度で観測されており、分子量も大きいため検出されていることが確認できる。一方、DrometrizoleとPhenol, 2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4,6-bis(1,1-dimethylpropyl)-は、ピーク強度が弱いため含有されているにもかかわらず、検出されているかは不明確である。

 

Fig. 1 Mass spectrum of sample by DIP-MS

DIP-MS/MSによる測定結果

Fig. 2に各添加剤成分の分子イオンをプリカーサーイオンとして用い、プロダクトイオンスキャン測定よって得られたプロダクトイオンスペクトルとプライベートライブラリー検索結果を示す。DIP-MS/MSでは、DIP-MSで確認が困難であったDrometrizoleとPhenolと2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4,6-bis(1,1-dimethylpropyl)-由来のプロダクトイオンスペクトルが得られておリ、プライベートライブラリーによって目的成分である事が確認できた。同様に、2-(2H-Benzotriazol-2-yl)-4,6-bis(1-methyl-1-phenylethyl)phenolとPhenol, 2,4-bis(1,1-dimethylethyl)-, phosphite (3:1)では、それぞれからプロダクトイオンスペクトルが得られると共に、プライベートライブラリーによって目的成分であることが確認できた。

 

Fig. 2 Product ion spectra of each additive and private library results 

まとめ

複数成分を含む試料のDIP-MSによる測定では、複雑なマススペクトルが得られるために目的成分を確認することは困難となるが、DIP-MS/MSであれば特定のイオンを選択してMS/MS測定を実施できるため、プロダクトイオンスペクトルを比較することで目的成分が含まれているか確認することが可能となる。さらに、事前に目的成分を登録したプライベートライブラリーを用いることで、ライブラリー検索によって目的成分を確認することができる。このように、 JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQはダイレクト分析においても有効な分析装置であることが示された。

分野別ソリューション

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