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ガスクロマトグラフ-高分解能質量分析および核磁気共鳴による有機合成化合物の構造確認を目的としたmsFineAnalysis AIの活用 - 直接導入プローブ測定 -

MSTips No. 475

はじめに

有機合成化合物の化学組成と化学構造の同定手法として、ガスクロマトグラフ-高分解能質量分析(GC-HRMS)と核磁気共鳴分光分析(NMR)の両方を用いた測定法が広く利用されている。
ターゲット化合物がGCを通過しない高沸点化合物の場合、GC-MS測定は適しておらず、GCを介さないダイレクトMS測定が適している。GC-HRMSであるJMS-T2000GCには、1.サンプルを入れたガラスキャピラリーを加熱するDIP(Direct Insert Probe)、2. フィラメントタイプのDEP(Direct Exposure Probe)、そして3.ソフトイオン化法である電界脱離イオン化法(FD)プローブの3種類のダイレクトMS測定プローブがある。化学組成の推定と化学構造を予測できるソフトウエア、msFineAnalysis AIはGC-MSだけでなくダイレクトMS測定結果の解析にも適しており、NMR測定方法の決定およびNMR測定結果の解析に役立つ。
NMR装置であるJNM-ECZ600Rに搭載可能なROYALプローブTM HFXはHF側(1H,19F側)のチューニングを1核、2核それぞれで行うことができ、測定によって使いわけることができる。それによりLF側(13C等)と合わせて3核の同時チューニングを実現したC,H,Fから成る有機合成化合物に対する強力な化学構造決定ツールである。
本アプリケーションノートでは、DEPを用いたEI法(DEI: Desorption Electron Ionization)とFDを用いたJMS-T2000GCとmsFineAnalysis AI、そしてJNM-ECZ600RとROYALプローブTM HFXを用いて高沸点化合物の化学組成と化学構造を解析した事例について報告する。

 

測定

581.8°Cと高い沸点をもつciprofloxacinをサンプルとした。 1mg/mLメタノール溶液に調製したサンプルをMS測定に用いた。また、重水と重水素化酢酸-d4を50:1の割合で混合した溶液0.6mLにサンプル10mgを溶解し、NMR測定を行った。 HRMSおよびNMRの測定・解析条件の詳細をTable 1に示す。

測定結果

DEIマススペクトルおよびFDマススペクトルのmsFineAnalysis AI 解析結果をFigure 1に示す。自動解析結果により、 ciprofloxacinが最有力候補として表示された。FDマススペクトルから確認された分子イオンの化学組成はC17H18FN3O3と推定された。分子イオンのアイソトープパターンは、計算されたC17H18FN3O3のアイソトープパターンとよく一致した。また、EIフラグメントイオンの化学組成はC17H18FN3O3と矛盾のない結果を示した。さらに、NISTデータベース検索でもciprofloxacin が一番高い類似度を示した。
次に、NMR結果によるMS結果の確認を行った。測定核種と測定方法はmsFineAnalysis解析結果を基に考えた。

Table 1.  Measurement and analysis conditions

 

Figure 1. msFineAnalysis AI results

 

msFineAnalysis AI解析結果に基づき19F, 1H, 13C NMR測定を行った。具体的には、一次元19F, 1H, 13C{1H,19F}及び二次元HSQC (Heteronuclear Single Quantum Coherence)とHMBC(Heteronuclear Multiple Bond Correlation)測定を実施した。
得られた各NMRスペクトルをFigure 2およびFigure 3に示した。図中には参考文献1に示されるciprofloxacinの合成経路を基にした重要な帰属を赤字で示した。その他のNMRシグナルも含めてciprofloxacinの化学構造を示唆した。

 

Figure 2. NMR spectra
Left: 19F spectrum(top), 1H spectrum(middle), 13C{1H, 19F} (bottom)
Right: HSQC

 

Figure 3.  Chemical sift table and HMBC spectrum and HMBC correlations on the chemical structure

まとめ

DEIおよびFDを用いたHRMS結果から化合物の化学組成および推定化学構造を得ることができた。このHRMS結果を基に行ったNMR測定の結果から骨格構造および官能基の位置に関わる情報を得ることができた。今回のサンプルではmsFineAnalysis AIの解析結果から正しい化学構造であるciprofloxacinを推定でき、かつNMR結果により正確に確認された。
本MSTipsで示したJMS-T2000GC + msFineAnalysis AIおよびJNM-ECZ600R + ROYALプローブTM HFXを用いた有機合成化合物の化学構造の同定方法は、幅広い有機合成化合物のすべての合成段階での利用が期待される。

参考文献

1) N. Perrer Tosso, Bimbisar K. Desai, Eliseu De Oliveira, Juekun Wen, John Tomlin, and B. Frank Gupton, J. Org. Chem. 2019, 84, 3370−3376.
DOI: 10.1021/acs.joc.8b03222

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