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msFineAnalysis AI Ver.2のターゲット分析例
②ポリマー種の推定

MSTips No. 479

はじめに

未知物質構造解析ソフトウェアmsFineAnalysis AI Ver.2のターゲット分析機能では予めリスト化された成分の分子式やマススペクトルなどの情報を元に、抽出イオンクロマトグラム(EIC)からピークを検出する。既報MSTips478ではソフトウェアプリセットのターゲットリストであるポリマー添加剤”Polymer additives”を用いたポリマー製品中の添加剤の分析例について紹介した。
これらターゲットリストはユーザーが自由に編集可能であるほか、目的に合わせて新規に作成することも可能である。本MSTipsではポリマーの主要熱分解物を用いたポリマー推定の応用例について紹介する1)。Figure 1に本応用例にて使用するターゲットリストを示す。No001 ポリエチレン(PE)の1,20-heneicosadieneおよびNo004アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)の2-Phenethyl-4-phenylpent-4-enenitrileはNISTライブラリー未登録物質であるが、事前に測定した結果をNISTユーザーライブラリーに登録しておくことで、マススペクトル類似度を用いた判定が可能となる。また抽出イオンとして分子イオンの代わりに強度の高いフラグメントイオンを指定することも可能であり、これにより高感度なピーク検出も可能である。

 

Figure 1 Target list for polymer type estimation

実験

サンプルには市販されているポリプロピレン(PP)、リサイクルPP、ポリエチレンテレフタレート(PET)、リサイクルPETの各製品を用いた。それぞれ0.2mg秤量し、熱分解-GC-MS法で測定した。イオン化法にはEI法とFI法(Field Ionization)を用い、得られたデータをmsFineAnalysis AIにより解析した。Table 1に測定条件の詳細を示す。

 

Table 1  Measurement conditions

測定結果

Figure 2にEI測定結果のTICクロマトグラムを示す。PPおよびリサイクルPP製品からは主要熱分解物である2,4-Dimethyl-1-hepteneが検出された。PET製品からは主要熱分解物であるCO2、安息香酸ビニル、安息香酸が検出された。リサイクルPET製品からはこれに加えいくつかのピークが検出された。

 

Figure 2 TIC chromatograms

ターゲット分析結果 ① - PP製品

Figure 3にmsFineAnalysis AIのターゲット分析の結果画面を示す。

 

Figure 3 Result window of target analysis

 

Table 2に分析結果のターゲットリストを示す。背景色は解析結果を反映しており、黄色はEIC上でピークが検出された成分、青色はこれに加えマススペクトル類似度等の定性解析による判定をパスした成分(=ターゲットであることが確認された成分)である。今回の結果ではPPの主要熱分解物である2,4-Dimethyl-1-hepteneのみが確認された。

 

Table 2  Target list

ターゲット分析結果 ② - リサイクルPP製品

Table 3に分析結果のターゲットリストを示す。PP製品と同様2,4-Dimethyl-1-hepteneのみが確認された。

 

Table 3  Target list

ターゲット分析結果 ③ - PET製品

Table 4に分析結果のターゲットリストを示す。PETの主要熱分解物であるBenzoic acidのみが確認された。

 

Table 4  Target list

ターゲット分析結果 ④ - リサイクルPET製品

Table 5に分析結果のターゲットリストを示す。 PET製品と同様Benzoic acidが確認された。これに加えポリスチレン(PS)のStyrene trimerおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)のMethyl methacrylateが確認され、PSとPMMAが含まれている可能性が示唆された。

 

Table 5  Target list

まとめ

msFineAnalysis AI Ver.2のターゲット分析を用いてポリマー推定を行った。その結果リサイクルPET製品にPS、PMMAといったポリマーが含まれている可能性を確認することができた。より詳細な情報を得るためにはノンターゲット分析が必要であるが、ターゲット分析は迅速に結果を得ることができスクリーニングとして有効である。

参考文献

1) Shin Tsuge, Hajime Ohtani, Chuichi Watanabe (2011), Pyrolysis - GC/MS Data Book of Synthetic Polymers, Elsevier

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