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熱分解-GC-TOFMSによるリサイクルPET製品の分析

MSTips No. 480

はじめに

サーキュラーエコノミーは天然資源の消費を減らし、既存の資源を最大限に利用することで持続可能な社会の実現を目指す世界的な取り組みである。ポリマー(プラスチック)リサイクルはその実現のために必要不可欠な技術である。例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルはその多くが水平リサイクルによりPETボトルとして再利用されるが、一部はカスケードリサイクル(=ダウンサイクル)として異なる製品に利用される。またより価値の高い製品に利用するアップサイクルも積極的に行われている。いずれのリサイクルにおいても安定した品質を維持するためには材料や製品の評価が不可欠であり、その分析手法としては熱分解-GC-MSが一般的に用いられる。
本MSTipsでは高性能ガスクロマトグラム飛行時間質量分析計JMS-T2000GCおよび未知物質構造解析ソフトウェアmsFineAnalysis AIを用いた、リサイクルPET製品の分析例について紹介する。

実験

サンプルには標準的なPETボトルおよび市販されているリサイクルPET製品(緩衝シート)を用いた。それぞれ0.2mgを秤量し、熱分解-GC-MS法で測定した。イオン化法にはEI法とFI法(Field Ionization)を用いた。得られたデータをmsFineAnalysis AIの差異分析機能を用いて解析した。Table 1に測定条件の詳細を示す。

 

Table 1  Measurement conditions

測定結果

Figure 1にEI測定結果のTICクロマトグラムを示す。 いずれのサンプルからも安息香酸や安息香酸ビニルといったPETの主要熱分解が検出された。リサイクルPET製品からはこれに加えていくつかのピークが検出された。

 

Figure 1 TIC chromatograms

 

Figure 2にmsFineAnalysis AIの差異分析の結果画面を示す。

 

Figure 2 Result window of two-sample comparison

 

Table 2にピークリストを、 Figure 3にリサイクルPET製品で強く検出された成分(赤色のグループ)の構造式を示す。メチルアクリレート、スチレンおよびその混成トライマーが含まれている。このことからリサイクルPET製品にはメチルアクリレート-スチレン(MS)コポリマーが含まれている可能性が示唆された。

 

Table 2  Peak list

 

Figure 3 Structural formulas (Red : strong in recycled PET product)

まとめ

msFineAnalysis AIの2検体比較を用いてPETボトルおよびリサイクルPET製品の分析を行った。その結果リサイクルPET製品にMSコポリマーが含まれている可能性を確認することが出来た。このリサイクルPET製品は薄型の高性能緩衝シートでありアップサイクルに相当する。MSコポリマーは成形性や耐候性の向上のためにブレンドされたものと考えられる。

分野別ソリューション

関連製品

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