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GC/MS/MSによるばいじん試料中のダイオキシン類分析

MSTips No. 491

はじめに

   Fig. 1 JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQ

ダイオキシン類の分析には、主に二重収束形質量分析計のGC/HRMSが用いられている[1, 2]。一方、EUや中国では食糧および飼料中のダイオキシン類の分析においてGC/MS/MSの使用も認められている[3, 4]。また、アメリカにおいてもGC/MS/MSによる測定方法が検討されている。このような背景から、日本でもGC/HRMS以外のGC/MSまたはGC/MS/MSによるダイオキシン類分析の検討が開始されている。本アプリケーションでは、ガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計JMS-TQ4000GC (Fig. 1)を用いた、ばいじん試料中のポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDDs: Polychlorinated Dibenzo-para-Dioxins)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs: Polychlorinated Dibenzofurans)の測定結果について報告する。なお、得られた測定結果については、GC/HRMSのJMS-800Dと比較も行ったので併せて報告する。

測定条件

測定は、ガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQを使用した。Table 1に測定条件を示し、Table 2にSelected reaction monitoring (SRM)トランジションを示す。Table 3に検量線用の標準試料濃度(CS1-5)を示す。標準試料は、JIS Dioxin/Furan Calibration Solution in Nonane(Cambridge Isotope Laboratories, Inc.)を用いた。

 

Table 1 Measurement condition

 

Table 2 SRM transition

 

Table 3 Standard sample for calibration curve

結果

CS1におけるピーク検出状況

Fig. 2にCS1における定量イオンと参照イオンのSRMクロマトグラムピークを平均化した平均SRMクロマトグラムピークを示す。平均SRMクロマトグラムピークでは、最も毒性が強いとされる2378-T4CDDをはじめ、全異性体が良好なピーク形状で観測された。

 

Fig. 2 Average SRM chromatogram peaks of CS1

CS1-5におけるAv-RRFのRSD

Table 4にAverage-Relative Response Factor(Av-RRF)のRelative Standard Deviation(RSD)を示す。CS1-5の測定データ(CS1は5回、CS2-5は各3回の繰り返し測定データ、計17点)を使用して、Av-RRFのRSDを算出した。GC/HRMSのJIS規格では、検量線の作成には全濃度領域で合計15点以上のデータを用いることが求められており、さらに、Av-RRFのRSDは10%を超えてはならないと規定されている。今回得られたRSDは3.8~8.7%であり、全異性体がGC/HRMSのJIS規格における基準値 (10%)を満たしていることが確認された。

 

Table 4 RSD of average RRF

IDL

Table 5にInstrument Detection Limit(IDL)を示す。GC/HRMSのJIS規格では、IDLは最低濃度の5回繰り返し測定データから得られた定量値の標準偏差を3倍にして算出することが規定されおり、各異性体毎に基準値が規定されている。今回得られたIDLは0.033~0.148 pgであり、全異性体がGC/HRMSのJIS規格の基準値を満たしていることが確認された。

 

Table 5 IDL by CS1

ばいじん試料中のダイオキシン類の検出

Fig. 3にJMS-TQ4000GCで検出された平均SRMクロマトグラムピークとJMS-800Dで検出された平均SIMクロマトグラムピークを示す。JMS-TQ4000GCで検出された4~10塩素化体における平均SRMクロマトグラムピークはJMS-800Dと同じピークパターンを示した。次に、JMS-TQ4000GCとJMS-800Dで得られた定量値をTable 6に、その比較結果をFig. 4に示す。相関係数R2は0.999の値を示しており、JMS-TQ4000GCで得られた定量値がJMS-800Dと同等であることが確認された。

 

Fig. 3 Comparison  average HRSIM chromatogram peaks by JMS-800D with average SRM chromatogram peaks by JMS-TQ4000GC

 

Table 6 Quantitative values of 2378-substituted each isomers by JMS-TQ4000GC and JMS-800D

Fig. 4 Comparison of quantitative values

まとめ

今回、GC-TQMS “JMS-TQ4000GC”を用いたダイオキシン分析について検討を行った。その結果、最も低濃度な標準試料であるCS1においても全異性体の検出が可能であった。また、CS1~5におけるAv-RRFのRSDおよびCS1におけるIDLについてもGC/HRMSのJIS規格の基準値を満たす結果が得られた。さらに、ばいじん試料中のダイオキシン類の定量値は、JMS-800Dとほぼ同等の値を得ることができた。これらの結果から、JMS-TQ4000GCがダイオキシン類分析においても有効であることが確認された。

参考文献

[1] JIS K0311(2020)
[2] JIS K0312(2020)
[3] COMMISSION REGULATION (EU) 2017/644 of 5 April 2017
[4] GB 5009, 205-2024

分野別ソリューション

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