SEC分取とNewSpiralTOF™を用いた分子量10万までのポリカーボネートの末端基解析の試み
MSTips No. 527
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計(MALDI-TOFMS)は、幅広い質量範囲で1価イオンを検出できるため、分子量分布の確認、末端基組成推定など合成高分子のキャラクタリゼーションにおいて強力なツールとなる。しかし、多分散度の大きいポリマーの分析では、高分子量域のイオン強度が低くなる「マスディスクリミネーション」が課題である。この課題を解決するには、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分子量に応じて分画し、多分散度を小さくした上でMALDI-TOFMSで測定することが有効であると知られている。一般的には、分子量1万を超える合成高分子測定には低分解能のリニアTOFが使用されることが多いが、質量精度が低いため末端基組成推定には利用できない。本報告では多分散度の大きいポリカーボネート(PC)をSEC分取し、高精度MALDI-TOFMSで末端基解析を試みた。
実験
ホスゲン法で合成したポリカーボネートを10mgを5mLのクロロホルムに溶解した。Figure 1に示すSECおよび分画装置を用いてTable 1の条件にて MALDI-TOFMS用に試料分画を行った。本分画装置では、加熱した窒素ガスにより噴霧しながら分画可能である。分画と同時に溶媒が揮発することから、同一カップに重ねて分画し、試料量を増やすことが容易に可能である。SECクロマトグラムおよび各分画の試料量、多分散度、絶対分子量推定値をFigure 2およびTable 2に示す。本SEC分画装置を用いることで90%前後の高い回収率を達成した。多分散度1。1程度になった分画②~⑧をMALDI-TOFMSの測定に供した。MALDI-TOFMSの試料調製では、クロロホルム10µLを金属カップに加えた分画溶液とマトリックス溶液(DCTB)を、各1µLと10µL混合し、1µLプレートに滴下乾燥した。カチオン化剤溶液(NaTFA)は事前にプレートに滴下乾燥した。その後、JMS-S3000 “NewSpiralTOF™”のSpiral正イオンモードにて測定を行った。
Table 1 分取条件


Figure 2 SECクロマトグラム

Figure 1 分取システム
Table 2 分画結果

結果
Figure 3に分画②~⑧のマススペクトルを示す。多分散度の大きいPCをSEC分画装置で分画することで良好なマススペクトルを得ることができた。 また、末端基組成推定で重要となる各質量域における同位体パターンの様子を拡大図で示した。 モノアイソトピックピークはm/z 5000程度までは十分なイオン強度で観測できるため、その領域で精密質量による末端基解析を行った。Figure 4に分画⑥~⑧のマススペクトルを示す。精密質量から末端基解析を行い、緑矢印は環状のオリゴマーであり、青/水色矢印は図に示す構造であると推定された。この2つのシリーズは分子量8万まで主要なシリーズとして観測された。
まとめ
SEC分画システムとNewSpiralTOF™を組み合わせることで、多分散度の大きい試料をMALDI-TOFMSで測定するため効率的な分画が可能であった。
各質量域における同位体パターンの変化を確認し、それに応じた高精度質量精度の検討を行った。
謝辞
SEC分画試料をご提供いただきました株式会社東ソー分析センター様、株式会社エス・ティ・ジャパン様に深く感謝いたします。

Figure 3 SECクロマトグラム

Figure 4 分画⑥~⑧のマススペクトルおよび主要シリーズの末端基
