SEM外部制御用APIとPython®を用いたLIB活物質NMC粒子の高倍率観察自動化
SM2025-02
はじめに
リチウムイオン二次電池の正極材活物質として使用されるニッケル・マンガン・コバルト酸リチウム (NMC) 粒子の表面状態や粒子形状を制御することは、電池性能の安定化に不可欠である。しかし、走査電子顕微鏡 (SEM) を用いて多量のNMC粒子の測長や表面の高倍率観察をオペレーターが手動で行うことは時間と労力を要する。一方、近年のSEMは高速かつ高精度な自動輝度調整 (ACB) や自動焦点調整 (AF)、自動非点補正 (AS) が実装されているだけでなく、外部制御用APIも公開されているため、ユーザー独自の自動化プログラムを作り上げることが可能となった。本研究では、上記課題を解決するため、自動測定に適した前処理方法の検討を下に、SEM外部制御用APIとPython®を用いたNMC粒子高倍率観察の自動化を実施した。
SEM外部制御APIとPython®による自動化
SEMをPython®やC#で制御できるように、外部制御用APIが公開されている。そのため、それぞれの研究・観察用途に合わせて、SEMによるルーティン作業を自動化することが可能である。Python®には画像処理に強いOpenCVや、グラフ描画に強いmatplotlibといったパッケージが公開されており、これらを気軽に活用することができる。そのため、SEMの自動化はもちろん、画像解析やグラフ作成、報告書の作成までを全て自動化させていくことが可能となる。
本研究での自動化の内容
試料前処理と母材の検討
自動観察において試料の前処理は自動調整や粒子検出の精度に大きく影響する。そこで、①帯電しないこと、②二値化に適したコントラスト差が得られること、③再現性良く高いスループットでできること、を軸に試料を載せる母材を検討した。粉体のNMC粒子は分散液中に分散させて、母材に滴下した。分散液には乾燥時間が短く、親水性の高いエタノールを選択した。比較時のSEM条件は、入射電圧5 kVで照射電流量は400 pAを用いた。二値化の閾値には、大津の二値化 [1] をOpenCVライブラリにより実装させた関数cv2.thresholdにより適用した。
| 二次電子像 | 反射電子像 | 結果 | |
|---|---|---|---|
| Al基材入り カーボンテープ |
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▲二次電子像でテープの帯電が見える ●組成コントラストが大きい ▲エタノールによるテープ表面の変形が見られる |
| 不織布カーボンテープ | ![]() |
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▲二次電子像でテープの帯電が見える ●組成コントラストが大きい ▲エタノールによるテープ表面の変形が見られる |
| カーボンペースト | ![]() |
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●帯電なし ●組成コントラストが大きい ●ペースト塗るだけで容易 |
| Si基板 | ![]() |
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●帯電なし ▲反射電子組成像で粒子とSi基板のコントラスト差が付かない ●Si基板使い捨てで容易 |
*Pythonは、Python Software Foundationの商標または登録商標です。
高倍率観察自動化条件
自然観察のフローチャート
| SEM | JSM-IT810SHL |
|---|---|
| 入射電圧 | 5 kV |
| WD | 7 mm |
| 照射電流量 | 400 pA |
| 検出器 | SED (二次電子検出器) BED (反射電子検出器) |
| 試料 | NMC811 |
|---|---|
| スタブ数 | 29スタブ |
| 1スタブあたりの視野率 | 3視野 |
| 倍率 | x200, x500, x5,000, x50,000 |
| 取得画像総数 | 696枚 |
| Python® | Version 3.10.17 |
|---|---|
| OpenCV | Version 4.11.0 |
| pythonnet | Version 3.0.5 |
実験結果
全29スタブの計696枚の画像を合計1時間49分17秒で取得することができた。これらの画像全てで輝度・フォーカス・非点が適切に調整されて撮影できていることが確認できた。ある一つの視野における各倍率での二次電子像、反射電子像を以下に示す。高倍率においても視野内に粒子をいれながら画像取得ができており、NMCの表面の微細構造を観察することができた。5千倍で粒子の形状、5万倍で表面形態を詳細にみることができ、サブミクロンサイズの一次粒子の大きさや形状を鮮明に観察することができた。
200倍から5万倍までのSEM像の取得結果
観察倍率200倍の反射電子組成像を用いて、各スタブの各視野における粒子の測長を、観察と同時に処理させた。全29スタブの各視野の測長結果を合算して、粒度分布と統計結果を算出した。中央値が11.34 µmに対して標準偏差が7.1 µmという粒子サイズの拡がりがあることを定量的に確認することができた。
同作業をオペレーターが手動で撮影から測長まで全て実施した場合、前処理も含めると業務時間丸1日を要してしまう。対して、自動化SEMはより短時間で作業が完結するだけでなく、測定中は別の作業に時間を充てることができる。
まとめ
NMC粒子の多量データ取得に向けて、試料の前処理の検討と自動観察機能の構築を行った。NMC粒子を塗布する母材としてカーボンペーストが適していることがわかった。また、SEM外部制御APIとPython®を組み合わせることで、目的に特化させた独自の自動化SEM を構築できることができた。今後は、NMC粒子だけでなく様々な分野において、目的に特化した自動化SEMの構築により、品質管理や材料開発のさらなる効率化が期待される。
参考文献
[1] Otsu, N. (1979). IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics, 9(1), 62–66.








