高機能で、かつ、使い勝手を高めた、電子銃電源です。
主な特長は以下になります。
特長
1. 歩留まり向上
XYスキャン、サークルスキャン、ラインスキャンが標準搭載
溶け跡調整が容易に設定でき、溶け跡最適化による蒸発分布の再現性向上が図れます。
2. パーティクル・スプラッシュの低減
加速電圧の高速応答性と放電抑止回路による高速放電抑止制御により、電子銃の放電発生時のビーム瞬発移動に伴う、ルツボ周囲付着物の再蒸着や蒸発材料のスプラッシュ発生を大幅に改善できます。
3. 成膜プロセス管理の利便性向上
デジタル表示により、電子銃の詳細な各種設定値を数値管理でき、電子銃の状態の把握と管理を容易に行うことができます。
計測器が無くても電子銃電源の状態を確認でき、技術フォローやトラブルシューティングが遠隔地から対応可能となり、対応時間が格段に改善されます。
標準搭載のアークカウント機能を利用すれば、アーク発生頻度や回数の傾向を数値として捉えることができるため、成膜室内の汚れ具合や電子銃の状態の把握に役立ちます。
4. 省エネ・コンパクト
高効率省エネ電源(消費電力 約10%改善) ※当社従来電源比
コンパクト設計
5. JST-F電源と載替可能
信号変換ユニットを使用することで、蒸着装置側の制御系に改造を加えることなく、電源の載替ができます。
ケーブルの構成は、「仕様/オプション」 タブをご参照ください。
特長1. 歩留まり向上
BS-720xxICE電源では、XYスキャン、サークルスキャン、ラインスキャンと、3種類のスキャンモードが標準搭載されています。
各モードにおいて、スキャン周波数設定や、ピーキング調整による滞在時間設定を行い、蒸着材料の溶け跡を改善することができます。
その結果、良好な膜厚分布が得られ、歩留まりが向上します。
[確認実験 : スキャンモードの違いによる膜厚分布]
サークルスキャンでは、蒸着材料が深く掘れた時でも、膜厚分布が安定しています。
以下の条件で実験を行い、ZrO2が浅く掘れた時と、深く掘れた時の分光特性を測定しました。
φ1300 mmチャンバー。T-S 1100 mm。基板ドームの最外周輪帯。
ZrO2ペレットを交換せず、1つのペレットで、λ/4ずつ3バッチ蒸着。
サークルスキャンと、XYスキャン、それぞれで実験。
1つのZrO2ペレットで、λ/4蒸着した膜の、1~3バッチの分光特性を重ねたグラフです。
XYスキャンでは、1バッチ目 (浅く掘れた時) と、3バッチ目 (深く掘れた時) で、基板ドーム最外周の分光特性がずれています。
サークルスキャンでは、基板ドーム最外周の分光特性が一致しています。
ACR (Advanced Circular mode)
従来のCIRCULARスキャンにXLINEスキャンの滞在時間設定を もたせたスキャンパターンです。
半径方向の滞在時間を細かく直感的に設定可能です。
Advanced Circular mode (ACR) の動作仕様
< 仕様 >
半径方向の滞在時間を数式ではなく、既存XLINEモードと同様のブロック指定方式とし、半径方向の強弱分布を自由に設定。
< 設定方法 >
すでにリングハース用に標準装備されているXLINEモードの波型生成方法をCircle scanモードに適用。
半径方向に20分割して滞在時間を細かく設定可能。
特長2. パーティクル・スプラッシュの低減
BS-720xxICE電源には、3段階の放電抑止機能 (アークサプレッサー) が標準装備されています。
放電抑止機能は、アークが発生した時、加速電圧を0Vに遮断し、アークカットした後、加速電圧を復帰させる機能です。
BS-720xxICE電源は、スイッチング電源の採用により、加速電圧の復帰する時間が、μsecオーダーと高速化されています。
放電抑止機能が働くと、加速電圧を遮断/復帰させるので、ビームがルツボの外に移動/復帰します。
加速電圧の復帰時間が長い電源では、ビームがルツボの外に照射される時間が長いため、ルツボ外の付着物が加熱されて蒸発してしまうことがあり、膜中の異物混入の原因になることがあります。
BS-720xxICE電源では、加速電圧の復帰時間が非常に短いため、
- 放電抑止機能が働いても、ルツボ外の付着物を加熱蒸発させることがありません。
-
放電抑止機能が働いても、ルツボ内の蒸着材料の表面温度の変動が非常に小さく安定しています。
これらにより、膜中の異物混入の低減に有効です。
[確認実験 : 加速電圧の復帰時間の影響]
加速電圧の復帰時間が非常に短い効果を、実験で確認しました。
ルツボの外に、試験片 (色の違いがわかるようにCu板にTiOxを酸欠状態で成膜した試験片) を置きました。
ビームをルツボに照射した状態で、圧力を急上昇させ、意図的にアークを多発させました。
従来型電源では、加速電圧の復帰時間が長いため、試験片にビームが照射される時間が長く、TiOxが蒸発し、下地のCu板が見えています。
それに対し、BS-720xxICE電源では、試験片は黒いままです。
加速電圧の復帰時間が短いため、試験片にビームが照射される時間が短く、温度が上がらず、TiOxが蒸発していません。
良品率比較
ユーザー様にて、JST-10F電源とBS-72050ICE電源を使用したUV-IRカットフィルターの生産を量産レベルで行い良品率を比較しました。 BS-72050ICE電源使用時は、異常放電発生時の高速復帰性能やスキャン調整機能による溶け跡改善により、JST-10F電源使用時より良品率が改善されました。
特長3. 成膜プロセス管理の利便性向上
BS-720xxICE電源には、操作盤がありません。
その代わりに、機能が豊富なリモコンがあります。電源の各種設定をリモコンから行えます。
各パラメータは数値で設定・管理するため、複数台使用時にも全く同じ設定にする事ができ、装置ごとに条件の違いが出る事を防ぎます。
またトラブル時や技術支援時のサービス対応スピードが格段に向上するだけでなく、設定値を管理する事で万が一の場合も復旧が容易です。
パラメータ設定はパスワードで保護することができるため、作業者と管理者の権限設定によるパラメータ管理も可能です。
設定をする時
リモコンを設定モードにして、数字で設定します。
[エミッション電流制御ボリューム]を回して、メニューから項目を選択したり、パラメータの数値を設定したりします。
手動で蒸着する時
[ACC][FIL] ON/OFFボタンで、ACC/FILを、リモコンからON/OFFできます。
[液晶ディスプレイ]に、ポジション、スキャン、エミッション電流の値が数字で表示されます。
エミッション電流が数字で表示されるため、前回と同じ蒸着を行うとき、前回と同じ数字に合わせればよく、再現性が高くなります。
BS-720xxICE電源には、アークカウント機能が搭載されています。
リモコン画面や、外部アナログ出力からアーキング発生回数を確認することができます。
アーキング発生の頻度や回数から、チャンバーの汚れ具合や電子銃の状態を把握することができ、成膜プロセスの管理に有効です。
特長4. 省エネ・コンパクト
消費電力が改善されています。
BS-720xxICE電源は、JST-F電源より小さくなりました。コンパクトに設計されています。
特長5. JST-F電源と載替可能
BS-64330CNV 信号変換ユニットは、JST-F電源から、BS-720xxICE電源に載せ替える場合に使用します。
蒸着装置の制御系と、BS-720xxICE電源の間に設置します。
蒸着装置側の制御系に改造を加えることなく、外部制御信号を、BS-720xxICE 電源用に変換するユニットです。
BS-64330CNV信号変換ユニットを使用する時のケーブル構成は、「仕様/オプション」タブをご参照ください。
その他の特長 : 入力電圧ワイドレンジ
BS-720xxICE電源の入力電圧仕様は、180~242 Vのワイドレンジです。
従来、入力電圧220 Vを標準とする地域では、入力電圧変動により仕様を超える入力電圧で使用される場合があり、電源を過負荷状態で使用するリスクがありました。
さらにビーム照射中の入力電圧変動は、ビームの位置ずれなどビーム特性の悪化に繋がる可能性がありましたが、BS-720xxICE電源では入力電圧変動時の溶け跡への影響はほとんどありません。
仕様・オプション
型式 | BS-72010ICE | BS-72020ICE | BS-72050ICE |
---|---|---|---|
電子銃接続数 | 1電子銃仕様 | 2電子銃同時仕様 | |
最大出力 | 4.8 kW | 10 kW | |
加速電圧 | -1 ~ -6 kV | -2 ~ -10 kV | |
エミッション電流 | 0 ~ 0.8 A | 0 ~ 1 A | |
最大走査周波数 | X軸/Y軸: 1 kHz | ||
入力電源 | 3相 AC180 ~ 242 V
7 kVA |
3相 AC180 ~ 242 V
15kVA |
3相 AC180 ~ 242 V
16 kVA |
外形寸法(電源) | 570 mm (W)
×700 mm (D) ×1,000 mm (H) |
570 mm (W) ×700 mm (D) ×1,400 mm(H) | |
質量 | 約140 kg | 約180 kg | 約200 kg |
接地 | A種 (10 Ω以下) |
ケーブル構成 : 標準
分類 | 名称 | 型式 | 長さ | 必要数量 | |
---|---|---|---|---|---|
1GUN | 2GUN | ||||
C1 | 高圧ケーブル (2本 1組) | BS-64100C1 | 5.5 m | 1式 (2本) | 2式 (4本) |
BS-64110C1 | 10 m | ||||
BS-64120C1 | 15 m | ||||
C2 | リターンケーブル | BS-64130C2 | 5.5 m | 1式 (1本) | 2式 (2本) |
BS-64140C2 | 10 m | ||||
BS-64150C2 | 15 m | ||||
C3 | コイルケーブル | BS-64161C3 | 6.5 m | 1式 (1本) | 2式 (2本) |
BS-64171C3 | 10 m | ||||
BS-64181C3 | 15 m | ||||
C4 | インターロックケーブル | BS-64190C4 | 6 m | 1式 (1本) | 1式 (1本) |
BS-64220C4 | 10 m | ||||
BS-64280C4 | 20 m | ||||
C5 | パワーステータスケーブル | BS-64200C5 | 6 m | 1式 (1本) | 1式 (1本) |
BS-64230C5 | 10 m | ||||
BS-64290C5 | 20 m | ||||
C6 | リモートコントローラケーブル | BS-64301C6 | 5 m | 1式 (1本) | 1式 (1本) |
BS-64310C6 | 10 m | ||||
BS-64211C6 | 15 m |
ケーブル構成 : BS-64330CNV 信号変換ユニットを使用する時
本ユニット使用の際はC4 とC5 の代わりにC7 とC8 が必要です。
分類 | 名称 | 型式 | 長さ | 必要数量 | |
---|---|---|---|---|---|
1GUN | 2GUN | ||||
C1 | 高圧ケーブル (2本 1組) | BS-64100C1 | 5.5 m | 1式 (2本) | 2式 (4本) |
BS-64110C1 | 10 m | ||||
BS-64120C1 | 15 m | ||||
C2 | リターンケーブル | BS-64130C2 | 5.5 m | 1式 (1本) | 2式 (2本) |
BS-64140C2 | 10 m | ||||
BS-64150C2 | 15 m | ||||
C3 | コイルケーブル | BS-64161C3 | 6.5 m | 1式 (1本) | 2式 (2本) |
BS-64171C3 | 10 m | ||||
BS-64181C3 | 15 m | ||||
(C7) | ステータス変換ケーブル | BS-64240C7 | 10 m | 1式 (2本) | 1式 (2本) |
BS-64250C7 | 15 m | ||||
(C8) | シグナル変換ケーブル | BS-64260C8 | 10 m | 1式 (3本) | 2式 (6本) |
BS-64270C8 | 15 m | ||||
C6 | リモートコントローラケーブル | BS-64301C6 | 5 m | 1式 (1本) | 1式 (1本) |
BS-64310C6 | 10 m | ||||
BS-64211C6 | 15 m |
アプリケーション
BS-720XXICE_2に関するアプリケーション
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