特長
新開発のスーパーハイブリッドレンズ(SHL)を搭載することにより高い操作性を維持しながら低加速電圧での高分解能を実現した次世代SEMです。電子銃はインレンズショットキー電界放出形を採用しているため、大照射電流で安定した分析が可能となります。
スーパーハイブリッドレンズ(SHL)による高分解能観察
対物レンズは静磁場と静電場を重畳させた、スーパーハイブリットレンズ(SHL)を採用しています。色収差や球面収差を低減することにより低加速電圧での分解能が特に向上しています。また、SHLは試料に対して磁場の影響を及ぼさないため、磁性材料の観察やEBSD測定も問題なく行えます。
低加速電圧でのエネルギー選別
上方検出器 (UED)の直下にエネルギーフィルタが付いており、エネルギー選別が可能です。低加速電圧においても精度良く二次電子と反射電子の選別ができるため、低加速電圧の反射電子像により、試料最表面の組成観察が可能です。
ジェントルビーム(GB)による最表面観察
試料にバイアス電圧を印加することにより(GB)、入射電子に対しては減速、放出電子に対しては加速の作用をもたらします。低い試料到達エネルギーにおいても高分解能でSN比の良い画像が取得可能です。より高いバイアス電圧を印加できるGBモードを用いれば数10 eVの試料到達エネルギーにおいて、さらに高分解能観察が可能です。
複数の検出器による試料のあらゆる情報取得
JSM-7800Fは上方検出器(UED)と上方二次電子検出器(USD)、反射電子検出器(BED)と下方検出器(LED)の4種類の検出器を備えることができます。UEDはフィルタの電圧に応じて二次電子と反射電子の量を変更できるため、電子のエネルギー選別が可能になります。USDはフィルタによって跳ね返された低いエネルギーの電子を検出します。BEDでは低角度の反射電子検出により、チャネリングコントラストが明瞭に観察できます。LEDでは照明効果による凹凸情報を含んだ立体感のある画像が得られます。
応用例
低加速電圧での観察
JSM-7800FはGBモードで試料到達エネルギーとして10eVから観察可能です。ここでは試料到達エネルギーを80 eVに設定し、1原子の厚さのグラフェンシートの表面の観察例を示します。

試料:グラフェン 到達エネルギー80eV
エネルギー選別
UEDとUSDにより反射電子像(左図)、二次電子像(右図)が同時に取得できるため、像解釈が精度良く行えます。二次電子像では凹凸情報が主体的となり金粒子とTiO2のコントラストの違いはありませんが、反射電子像では、平均原子番号が高い金粒子が明るく見えます。
反射電子像

試料:金担持TiO2触媒(2kV)
二次電子像

GBSHを用いた観察
GBSHを用いて高いバイアス電圧を試料に印加することで、より収差が低減し高分解能観察が実現できます。メソポーラスシリカのメソ孔中のマイクロ孔が鮮明に観察できます(下図)。

試料:メソポーラスシリカ 試料到達エネルギー:1keV
磁性材料の観察
SHLは磁場漏れを抑制した対物レンズです。このため、磁性材料であっても低い到達エネルギーでも高分解能観察が容易に行えます。

試料:マグネタイトナノ粒子 試料到達エネルギー:1keV
磁性材料のEBSD測定
SHLは磁場漏れの影響がないため、EBSDにも適しております。下図のようにIPF Mapにより結晶粒の方位が精度よく確認できます。

Number of points: 118585
Dimensions:
X Max: 80.00 microns, Y Max: 79.89 microns
Step: 0.25 microns
Phases: Nd2Fe14B

試料から得られたEBSDパターン例
( 任意の点で取得)

仕様・オプション
分解能 | 0.8 nm(15 kV)
1.2 nm(1 kV) 3.0 nm (15kV、5nA、WD10mm) |
---|---|
倍率 | ×25~×1,000,000(SEM) |
加速電圧 | 0.01kV~30kV |
試料照射電流(プローブ電流) | 数pA~200nA |
開き角自動最適化レンズ | 組込み |
検出器 | 上方検出器(UED)
下方検出器(LED) |
エネルギーフィルター | UEDフィルター電圧可変機能組込み |
ジェントルビーム(試料バイアス) | 組込み |
デジタル画像 | 1,280×960画素、800×600画素 |
試料交換室 | TYPE2Aを構成 |
試料ステージ | フルユーセントリックゴニオメーター、5軸モーター駆動 |
X-Y | X:70mm、Y:50mm |
傾斜 | -5~+70° |
回転 | 360° |
作動距離 | 2mm~25mm |
排気系 | SIP 2台、TMP、RP |
省エネ設計 | 定常稼働時: 1.1 kVA
省エネルギーモード時: 0.8 kVA |
主なオプション
エネルギー分散形X線分析装置(EDS)
波長分散形X線分析装置(WDS)
結晶方位解析装置(EBSD)
カソードルミネッセンス(CLD)
アプリケーション
JSM-7800Fに関するアプリケーション
MALDI Application: イメージング質量分析法と走査型電子顕微鏡による指紋分析
Application of Scanning Electron Microscope to Dislocation Imaging in Steel
ショットキーSEMにおける大電流時のビーム径増大を防ぐ電子光学系とその検証
ギャラリー

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Serial Block-face SEM JSM-7200F・7800F / Gatan 3View®2XP
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