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高分解能走査透過電子顕微鏡法によるアモサイト石綿断面微細組織観察

EM2025-06

はじめに

角閃石系石綿の中でもクロシドライト石綿は微細化しやすく、吸引性が高いため、人体への毒性が高いと考えられている。その微細化については、多くの研究が行われており (例えば [1])、クロシドライト石綿が多結晶の微繊維の集まりであり、多くの積層不整や層状ケイ酸塩が関与している可能性が示唆されている [1]。我々は、走査透過電子顕微鏡法 (STEM) の一つである最適明視野STEM (OBF-STEM) [2] を用いてクロシドライト石綿の断面を観察し、低電子線照射条件下でも高コントラストで原子分解能観察が可能なOBF-STEMにより、クロシドライト石綿微繊維の隙間に存在する層状ケイ酸塩鉱物がタルク様ケイ酸塩であることを明らかにした [3]。一方、同じ角閃石系石綿のアモサイト石綿も、縦横比が大きいため、人体への影響力が大きい可能性が示唆されている [4]。しかし、これまで詳細な断面観察を行った研究は少なく、その微細化メカニズムは不明である。微細化メカニズムの解明には、他の石綿との鉱物学的類似性や相違点を明らかにすることが重要である。本研究ではクロシドライト石綿との比較を目的として、高分解能STEMを用いたアモサイト石綿の微細組織観察を行った。

1. 実験条件

JEM-ARM200F

  • 装置:JEM-ARM200F NEOARM (HR)
  • 加速電圧:200 kV
  • プローブ電流:~10 pA
  • 試料:南アフリカ産アモサイト石綿ケープ産クロシドライト石綿 (比較用)

2. アモサイトとクロシドライトの比較

図1

図1. アモサイト・クロシドライトのADF-STEM低倍率像 (a)(b)と中倍率像 (c)(d)

アモサイトとクロシドライトでは微繊維の大きさが異なり、また微繊維間の空孔の大きさも異なっている (a)(b)
アモサイトでは層状ケイ酸塩が微繊維の粒界三重点などの隙間を埋めるようにしばしば存在している (a)
クロシドライトでは微繊維中に転位が見られるが (d)、アモサイトの微繊維にはほとんど見られない (c)

図2

図2. アモサイト・クロシドライトの粒度分布

アモサイトの微繊維の長径は100~1000 nm程度で、最頻値は"200<x≤400"の階級である。
クロシドライトの微繊維の長径は10~200 nm程度で、最頻値は"40<x≤80"の階級である。

 

図3

図3. アモサイトの層状ケイ酸塩と転位のADF-STEM中倍率像 (a)(b)と原子分解能像 (c)(d)

アモサイトでは微繊維中にほとんど転位が見られないが(図1)、粒界を埋めている層状ケイ酸塩の周囲の微繊維に限定的に存在している(a)(b)。
転位は三重鎖によって構成され(c)、その境界を多重鎖ケイ酸塩で繋いでいるような箇所も存在している(d)。

3. アモサイト中の層状ケイ酸塩鉱物

図4

図4. アモサイト中の層状ケイ酸塩のADF-STEM原子分解能像

粒界を埋めているアモサイト中の層状ケイ酸塩には層間原子が存在しており、層の基底間隔 (d002)は~1.03 nmであることから、アモサイト中の層状ケイ酸塩鉱物は雲母様ケイ酸塩鉱物であることが示唆される。

 

図5

図5. アモサイトのEDS元素マップ・元素マップからの抽出スペクトル (Si規格化)

アモサイト中の層状ケイ酸塩はカリウム, マグネシウム, 鉄などの元素に富んでおり、カチオン比から、雲母に近しい層状ケイ酸塩であると考えられる.また、特に鉄、マグネシウム、アルミニウムにおいて濃度分布の違いが場所によって見られる。

ADF-STEM観察、EDS分析の結果、アモサイト中には
雲母もしくは雲母に類似したケイ酸塩鉱物が存在することが分かった。

まとめ

  • 高分解能STEMを用いてアモサイト石綿の微細組織観察を行った。

  • クロシドライトと比較を行ったところ、微繊維の長径や多重鎖ケイ酸塩・積層不整の分布に違いが見られた。

  • ADF-STEM観察の結果アモサイト中には雲母もしくは雲母に類似したケイ酸塩鉱物が存在することが分かった。

  • EDS分析により、層状ケイ酸塩には組成的な多様性があることも明らかになった。

引用文献

[1] J.H. Ahn & P.R. Buseck (1991) Am. Min., 76, 1467-1478.
[2] Ooe et al. (2021) Ultramicroscopy 220, 113133.
[3] 大西 & 三浦 (2023) 日本鉱物科学会 2023年年会講演要旨集 279-280.
[4] 村井 (2006) 岩石鉱物科学 35, 34-39.

 

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