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電界脱離-高分解能質量分析計を用いた 熱/光反応性の高い化合物の化学式確認 [GC-TOFMS Application]

MSTips No. 403

はじめに

ソフトイオン化の一つである電界脱離 (FD) と高分解能飛行時間質量分析計 (HRTOFMS) の組み合わせは、クロマトグラフを用いない直接サンプル導入測定法として、合成化合物の化学組成同定および分子量の確認に活用されています。FD法はサンプルを迅速に気化およびイオン化するため、特に熱反応性もしくは光反応性の高い化合物に対して重宝されています。

FD法にはエミッターを取り付けたプローブを使用します。エミッターとはカーボンウィスカーをタングステンワイヤー上に成長させたものです。エミッターにサンプル溶液を塗布した後、質量分析計に導入、電極に高電圧を印加することによりFD測定を行います。

マイクロシリンジを用いてサンプル溶液をエミッターに塗布する方法(Syringe sampling method)が一般的なサンプリング方法として使用されています。本アプリケーションノートでは、シリンジサンプリング方法の手順およびFD-HRMSにより熱および光反応性の高い化合物の化学式を確認した結果について報告します。

測定

Figure 1に化学構造を示した熱および光に不安定なビスジアゾ化合物をサンプルとして用いました。サンプルはTHFを用いて10 mg/mLに調製しました (サンプル溶液)。測定条件はTable 1に示します。

Figure 2にサンプリング手順とサンプリングに使用する器具の概略図をそれぞれ示します。

Figure 1

Figure 1. Chemical structures

Table 1. Measurement and analysis conditions

HRMS
Sampling method Syringe
Sample volume 4 μL
TOFMS JMS-T2000GC (JEOL)
Ionization FD+ : -10 kV, 40 mA
Cathode voltage -10 kV
Emitter current program 0 mA → 25.6 mA/min → 40 mA
Monitor ion range m/z 35-1600

サンプリング手順

  1. FDプローブをプローブ台に設置。
  2. サンプル溶液をマイクロシリンジで4µL取り、シリンジ台に設置。
  3. マイクロシリンジ先端をエミッターに近接。
  4. プランジャーを押して液滴を作り、エミッター上サンプルを塗布。

Table 2. The features of syringe sampling with tool

Sampling operability Requires familiarity with sampling
Sample volume Approx. 4 µL/measurement
Merits
  • Requires smaller sample volume
  • Good for analytes in solvents with low boiling temperatures
Figure 2

Figure 2. Scheme of syringe sampling tool

測定結果

両サンプルのFD-HRMSマススペクトルをFigure 3に示します。いずれのマススペクトルからも分子イオン[M]+・が一番高い強度のピークとして検出されており、不純物および熱・光反応成分も確認されました。また、分子イオンのm/zは、1 mDa以下の誤差で検出されました。

Figure 3

 

Figure 3

Figure 3. FD mass spectra and estimation results of chemical formula from 
exact mass of molecular ions

 

シリンジサンプリング法の特長をTable 2に示しました。本サンプリング法は操作に多少の慣れが必要なものの、必要なサンプル量はマイクロシリンジに取る量で済むため少なく、さらにエミッターのワイヤー部だけにサンプルを塗布することからエミッターを汚染しにくいことが特長です。また、サンプル溶液を繰り返し塗布することによりエミッター上で濃縮操作が可能です。またさらに高気密性なシリンジを用いるため高揮発性溶媒のサンプリングにも有利です。

まとめ

本MSTipsではシリンジサンプリング法を用いたFD-HRMS測定を用いて、2種類の熱・光高反応性化合物の分子式を確認しました。FD測定はサンプリングから測定を終えるまでの時間が1~3分と短いゆえに、化合物の化学組成把握や分子量測定を迅速に行える分析法として利用されています。さらに、本MSTipsで示すように熱・光高反応性化合物に対しても有用な測定方法です。

謝辞

本MSTipsで測定したサンプルをご提供いただき、そしてデータの使用をご快諾いただきましたOxford Suzhou Center for Advanced Researchの刘晓松博士 (Dr. Xiaosong Liu) に対し、ここに感謝の意を表します。

 

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