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msFineAnalysis AIを用いたポリプロピレン製品中異物の構造解析 [GC-TOFMS Application]

MSTips No.424

はじめに

ポリプロピレンは高い強度と耐熱性を持ち、加工性にも優れていることから多くの工業製品に利用されている。製品化の際には素材ペレットの粉砕、混合、成形等の工程を経るが、それらの工程において異物が混入すると製品の性能低下を引き起こす。異物の特定には一般的に熱分解-GC-MS法が用いられるが、熱分解物の多くはマススペクトルライブラリー未登録であり、ライブラリーサーチに頼った定性分析では十分な結果を得ることは難しい。これらライブラリーサーチ未登録物質(=未知物質)の定性分析には飛行時間質量分析計JMS-T2000GCと未知物質構造解析ソフトウェアmsFineAnalysis AIが有効である。既報MSTips No.330ではポリプロピレンの製品中の異物分析における、EI/SI統合解析を用いた分子式導出について紹介した。本MSTipsではAI構造解析を用いた構造式導出について紹介する。

実験

JMS-T2000GC, msFineAnalysis AI

サンプルにはポリプロピレン製品の(A)良品と(B)不良品を用い、熱分解-GC-MS法による測定を行った。サンプル量はEI法では0.2mg、FI法では1.0mgとした。差異分析のための測定回数はEI法ではn=5、FIではn=1とした。msFineAnalysis AIの差異分析散機能を用いて不良品特有のピークを抽出し、その分子式と構造式を導出した。測定条件および解析条件をTable1に示す。

Table 1 Measurement and analysis conditions

EI測定結果のTICクロマトグラム

Figure 1にEI測定結果のTICクロマトグラムを示す。(A)良品と(B)不良品で概ね似た形状のクロマトグラムが得られたが、 (B)不良品の5min付近に大きな差異ピークが確認された。ライブラリーサーチの結果、このピークはスチレンと推定された。

Figure 1 TIC chromatograms of EI method

差異分析のボルケーノプロット

Figure 2に差異分析におけるボルケーノプロットを示す。それぞれのプロットはクロマトグラム上のピークに対応しており、横軸を強度比、縦軸を統計的有意性(再現性)として差異を視覚的に表現している。今回の分析では最大ピークとの強度比2%までの82ピークを対象とし、(B)不良品に特有な12ピークを抽出した。

Figure 2 Volcano plot

(B)不良品に特有なピークの定性結果

Table 2に(B)不良品に特有なピークの定性結果を示す。セル”LIB.”が”mainlib”となっているものはNISTライブラリーサーチにより化合物名と構造式が導出されたことを表している。”AI”となっているものはAI構造解析によりそれらが導出されたことを表している。ライブラリーサーチにより導出できたのは3ピークのみであったが、AI構造解析では残りの9ピーク全てを導出することができた。

Table 2 Qualitative analysis results of peaks specific to (B) defective product

Figure 3に導出された構造式の一覧を示す。ID023~050はいずれもASコポリマーの混成ダイマーおよびトライマ―を示唆する構造であり、文献とも高い精度で一致した1)。このことから(B)不良品に混入した異物がASコポリマーであることが特定できた。

Figure 3 Structural formula of peaks specific to (B) defective product

結論

JMS-T2000GCとmsFineAnalysis AIによりポリプロピレン製品の(B)不良品中に含まれる異物がASコポリマーであることが特定できた。熱分解物の多くはマススペクトルライブラリー未登録であり、特にASのようなコポリマーではその傾向が強い。これらの分析に対しJMS-T2000GCとmsFineAnalysis AIは活躍が期待できる。

参考文献

1) Shin Tsuge, Hajime Ohtani, Chuichi Watanabe (2011), Pyrolysis - GC/MS Data Book of Synthetic Polymers, Elsevier

分野別ソリューション

関連製品

JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha 高性能ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計

msFineAnalysis AI 未知物質構造解析ソフトウェア

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