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msFineAnalysis iQ Ver.2のターゲット分析例②
高分子材料中の添加剤の迅速分析

MSTips No.487

1. はじめに

ターゲット分析は、GC/EI測定データ及びソフトイオン化(SI)測定データを用いる統合解析1)をベースとした、特定化合物のみを迅速且つ高精度に探索及び判定する手法である。本手法では、事前に探索したい化合物のCAS#、分子式(もしくは分子量)、フラグメント組成式などをターゲットリストに登録する。登録した情報をもとに、GC/EI測定データ及びGC/SI測定データに対して抽出イオンクロマトグラム(EIC)を描画し、ピークを検出する。検出したピークについて、マススペクトル中の分子イオンピーク及びその同位体パターン、NIST データベース検索によるスペクトル類似度やリテンションインデックス(RI)を確認し、これらの総合的な結果をもって目的の化合物であるか否かを判定する。
今回、本手法を用いて、熱抽出GC-MS法による高分子材料の測定結果から、添加剤のみを迅速に分析したので報告する。

2. 実験

試料には、市販のポリ塩化ビニル(PVC)製品を約1.0 mg用いた。測定には、前処理装置として熱分解(熱抽出)装置(EGA/PY-3030D, フロンティア・ラボ社製)を装着したGC-MS(JMS-Q1600GC, 日本電子製)を使用した。イオン化法はEI法およびSI法として光イオン化(PI)法を用いた。得られたデータの解析は、統合解析ソフトウェア(msFineAnalysis iQ Ver.2, 日本電子製)に搭載されたターゲット分析機能を用いた。Table 1に測定条件を示す。

EGA/PY-3030D-JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

EI/PI共用イオン源

Table 1 Measurement Condition

3. 測定結果

3.1 TICC

Fig.1に熱抽出GC-EI測定のTICクロマトグラムを示す。NaphthaleneやAnthracene、Fluorene、Indeneなどの主要熱分解物が検出された。ターゲット分析により、測定結果から添加剤のみを探索した。ターゲットリストには、ポリマーの添加剤として一般的に使用される化合物が登録されたプリセットのリスト(Table 2)を使用した。尚、ターゲットリストは自由に作成や編集が可能である。

Fig.1 GC/EI TIC chromatogram

Table 2 Target list of Polymer_Additives 

3.2 ターゲット分析結果

Fig.2に、ターゲットリストに登録された化合物のうち、ターゲット判定の結果その化合物であることが確認された添加剤を示す。結果より、PVC製品中の酸化防止剤や安定剤、滑剤、可塑剤などの添加剤6種類の含有が確認された。

Fig.2 Target information

3.3 ID:T003のターゲット分析結果の詳細

例として、ID:T022の化合物のターゲット分析結果の詳細を述べる。ターゲットリストに登録した情報(Fig.2)により、EI測定及びPI測定において、T022の分子式(C26H38O2)からEIC(m/z 382)が描画され、 PI測定におけるEICからRT23.4 minにピークが検出された。(Fig.3 ) このピークはTICC上では強度比1 %以下と微弱であり、ノンターゲット分析での確認は難しかったが、ターゲット分析により迅速に確認できた。Fig.4に、本ピークのターゲット判定結果を示す。結果より、スペクトル類似度は813(Max 999)であり、リテンションインデックスの誤差(ΔRI)は35 [iu]であった。また、PIマススペクトルでは分子イオンピークが確認され、同位体パターンのマッチングスコアは0.91(Max 1.00) と判定項目のいずれにおいても良好な結果であった。
以上より、RT23.4 minに検出されたピークが2 -tert-butyl-4-[1-(5-tert-butyl-4-hydroxy-2-methylphenyl)butyl]-5-methylphenolであることが確認された。

Fig.3 GC/PI Chromatograms [Upper: TICC, Lower: EIC(m/z 382)]

Fig.4 Result window of Target Analysis

まとめ

ターゲット分析によりPVC製品からポリマー添加剤を探索した。その結果、6種類の添加剤が含有されていることが確認され、本手法により目的の化合物の迅速且つ高精度な分析が可能であることが示された。

参考文献

1) M. Ubukata et al, Rapid Commun Mass Spectrom., 34 (2020). DOI: 10.1002/rcm.8820

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