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熱抽出-GC-MS法によるTBBPAとフタル酸エステル類、臭素系難燃剤の同時分析

MSTips No. 500

1. はじめに

ガスクロマトグラフ質量分析計 JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

テトラブロモビスフェノールA(以下、TBBPA)は、ABS樹脂やフェノール樹脂、接着剤などの難燃剤として幅広いプラスチック製品に使用される。しかし、人体残留性が懸念されることから、REACH規則(EU)やTSCA(米国), 化審法などにより、各国で使用の規制が検討されている。
 同種の規制物質であるフタル酸エステル類やPBDE等において、その含有/非含有を判断するスクリーニング法として、IEC 62321-8に定められる熱抽出-GC-MS 法がある。本法は試料の前処理なしで直接分析が可能な手法である。(MSTips No.298)  今回は、JMS Q1600GC UltraQuad ™ SQ Zeta を用いて熱抽出-GC-MS 法によるTBBPA とフタル酸エステル類、臭素系難燃剤の同時分析を試みた。その結果、良好な検出感度と再現性を得られたので報告する。

2. 実験

 試料には、TBBPA標準試薬およびフタル酸エステル類9種をそれぞれ約1000 ppm含有したPVC樹脂(NMIJ CRM 8152-a)、臭素系難燃剤10種をそれぞれ約1000 ppm含有したPP樹脂(ERM-EC591)を使用した。樹脂はそれぞれ約0.5 mgを削り取り試料カップへ導入し、TBBPAは0.05 µg/µLに調製したTHF溶液を2µL(樹脂量約1.0 mgに対して100 ppm)添加した。測定条件をTable 1に示す。本報告ではフタル酸エステル類としてDIBP, DBP, BBP, DEHPを、臭素系難燃剤としてDecaBDEを測定対象成分とした。

Table 1 Measurement Condition

Thermal Desorption (EGA/PY-3030D, FRONTIER LAB) MS
Furnace temp. 200 °C-20 °C/min-300 °C-5 °C/min-340 °C (1 min) Interface temp. 300 °C
Interface temp. 300 °C lon source temp. 250 °C
GC lonization El (70 eV, 50 µA)
Column UA-PBDE(Frontier Laboratories Ltd.), 15 mx0.25 mm
id, 0.05 µm film thickness
Acquisition mode SIM/Scan
Column flow 1.0 mL/min, He SIM monitoring ion DIBP, DBP:223, 205, 149
BBP 206, 91, 149
DEHP:279, 167, 149
TBBPA:528.8, 543.8, 526.7
DecaBDE:799.3, 797.3, 959.1
Oven temp. 300 °C
Inlet temp. 300 °C
Injection mode split (1/50) Scan range m/z 50-1000

3. 結果

3.1 EGA-MS法を用いたTBBPAの熱抽出温度の確認

 EGA-MS法を用いて、IEC 62321-8に準ずる熱抽出温度条件200 ℃-20 ℃/min-300 ℃-5 ℃/min-340 ℃(1 min)においてTBBPAの抽出が可能であるかを確認した。EGA-MS測定(80 ℃-20 ℃/min-600 ℃)のEIC(m/z 529)をFigure 1に示す。温度域200-340 ℃のピーク面積はピーク面積全体(灰色)の90%以上であり、本条件においてTBBPAの抽出が十分可能であることが確認できた。

Figure 1. EIC(m/z 529) of EGA-MS(scan) measurement

m/z 529:TBBPAのマススペクトル基準ピーク

3.2 SIMクロマトグラム

 SIM/Scan測定における対象成分のSIMクロマトグラムをFigure 2に示す。対象成分6種の良好なクロマト分離が確認できた。

Figure 2. SIM chromatograms of each component

3.3 検出感度と再現性

試行回数n=3でSIM/Scan測定した際の、TBBPAのSIMクロマトグラムをFigure 3に、対象成分の重量面積比の変動係数(C.V.)をTable 2に示す。TBBPAのピークは十分な強度で検出されており、重量面積比のC.V.は対象成分全てで10%以下であった。

Figure 3. SIM chromatograms of TBBPA (n=3)

 

Table 2. Weight area ratio and C.V. of each component

Compound name Weight area ratio C.V.
#1 #2 #3
DIBP 623811 617668 617858 0.5
JEM-1400 543706 531217 534302 1.0
BBP 1276263 1293680 1262182 1.0
DEHP 636690 620154 612234 1.6
TBBPA 228580 226292 333957 1.0
DecaBDE 126182 141878 118888 7.4

※ピーク面積値の樹脂の秤量値に対する比, TBBPAは添加量一定のため換算なし

結論

昨今、人体への有害性が懸念されている樹脂添加剤テトラブロモビスフェノールA(TBBPA) について、 JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを用いた熱抽出-GC-MS 法により、フタル酸エステル類および臭素系難燃剤との同時分析を試みた。その結果、良好な検出感度と再現性が得られスクリーニング分析が十分に可能であることを確認できた。

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