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msFineAnalysis iQ Ver.2のターゲット分析例④
加熱脱着-GC-MS法を用いたほうじ茶の香気成分分析およびピラジン類の探索

MSTips No. 506

1. 概要

ピラジン類は、ほうじ茶の香ばしさを特徴づける香気成分として知られており、近年では健康への効果も期待され注目を集めている成分である。食品香気成分の分析法として加熱脱着(TD)-GC-MS法がある。試料の香気成分を高感度かつ網羅的に分析出来る一方で、検出される多数の成分の中から特定の成分を探索するのには時間を要する。
ターゲット分析は、GC/EI測定データ及びソフトイオン化(SI)測定データを用いる統合解析1)をベースとした、特定化合物のみを迅速且つ高精度に探索及び判定する手法である。本手法では、事前に探索したい化合物のCAS#、分子式(もしくは分子量)、フラグメント組成式などをターゲットリストに登録する。登録した情報をもとに、GC/EI測定データ及びGC/SI測定データに対して抽出イオンクロマトグラム(EIC)を描画し、ピークを検出する。検出したピークについて、マススペクトル中の分子イオンピーク及びその同位体パターン、NIST データベース検索によるスペクトル類似度やリテンションインデックス(RI)を確認し、これらの総合的な結果をもって目的の化合物であるか否かを判定する。
今回は、 TD-GC-MS法を用いてほうじ茶の香気成分を測定し、ターゲット分析によりピラジン類のみを迅速に分析した。

 

統合解析ソフトウェアmsFineAnalysis iQ Ver.2

ターゲット分析ワークフロー

2. 実験

試料には、静岡県産(やぶきた)のほうじ茶葉を約200 mg用い、サンプルチューブに投入した。測定には、前処理装置として加熱脱着装置(TD100-Xr, MARKES社製)を装着したGC-MS(JMS-Q1600GC, JEOL製)を使用した。イオン化法はEI法およびソフトイオン化(SI)法として光イオン化(PI)法を用いた。得られたデータの解析は、統合解析1)ソフトウェア(msFineAnalysis iQ, JEOL製)を用いた。Table 1に測定条件を示す。

 

Sample

 

TD100-Xr-
JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

Table 1 Measurement Condition

3. 測定結果

3.1 ノンターゲット分析

Figure 1にTD-GC-MS測定のTICクロマトグラムを示す。主なピークとして、メーラード反応(焙煎)によって生成され香ばしさに寄与すると知られている2-FuranmethanolやDDMP、茶葉の青臭さに寄与する(E,E)-2,4-HeptadienalやNeophytadiene、カフェインなどが検出され、TD-GC-MS法による、ほうじ茶葉の香気成分分析が可能であることが示された。

 

Figure 1 EI/TIC chromatogram

3.2 ターゲットリストの編集

Table 2に、ピラジン類を8種類登録したターゲットリストを示す。ターゲット分析では、分子式、フラグメント組成式、m/z値のいずれかの情報により化合物を探索できる。今回は分子イオン情報を用いた。

 

 

Table 2 Target List

3.3 ピラジン類のターゲット分析結果

Figure 2にターゲット分析結果を示す。図の左下ターゲット情報より、リストID:[T001]、[T002]、[T003]、 [T004]、[T007]、 [T008]の含有が確認された(背景色:青)。選択中の[T001] Pyrazineの探索のためにターゲットリストに登録したm/z値は80であり、EI測定およびSI測定におけるEIC(m/z 80)から化合物の候補ピークが検出された。そのうち、RT 2.73 minのピーク() のターゲット判定(ターゲット化合物であるか否か)の結果をFigure 3に示す。

 

Figure 2 Result of Target Analysis

 

ターゲット判定の結果、EI測定およびPI測定で分子イオンピークが確認され、実測RI値とデータベースRI値の差(ΔRI:30以内で良好)も-8 [iu]と良好であった。スペクトル類似度(Max 999)については、本ピークのイオン強度が低かったためスペクトル類似度が下がり判定NGとなったが、リバース類似度は801と良好な結果が得られているため、ターゲット判定を手動でOKに変更した()。以上より、PyrazineがRT 2.73 minに検出されていることが確認できた。このように、ターゲット分析では、ノンターゲット分析では見落としてしまうほどのイオン強度の化合物でも含有の確認が可能となる。

  • 類似度が実測マススペクトルの全ピークから算出されるのに対し、リバース類似度はライブラリスペクトルに存在するピークのみから算出される。夾雑ピークが含まれる場合にリバース類似度が高くなる傾向がある。

 

Figure 3 Result of Target Judgment

まとめ

TD-GC-MS法を用いてほうじ茶葉の香気成分を測定し、ターゲット分析によりピラジン類を探索した。その結果、ピラジン類の含有を迅速に確認できた。その中でも、Pyrazineについてはノンターゲット分析では見落としてしまうほどのイオン強度であったが含有を確認することが出来た。以上より、ターゲット分析による特定の化合物の迅速且つ高精度な分析が可能であることが示された。

参考文献

1) M. Ubukata et al, Rapid Commun Mass Spectrom., 34 (2020). DOI: 10.1002/rcm.8820

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