窒素キャリアガスを用いたHS-GC-MS法によるジチオカルバメート系農薬の分析
MSTips No. 529
1. はじめに
ジチオカルバメート系農薬は、野菜, 果樹用の殺虫殺菌剤として広く使用されており、現在7種類のジチオカルバメート系農薬 (チウラム、ジラム、マンネブ、マンゼブ、ジネブ、プロピネブおよびポリカーバメー) が水質管理目標設定項目の目標値が設定されている。これらジチオカルバメート系農薬について、「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について」において、別添方法24が採用されている。本検査法では、検水に塩酸を添加後、100℃で1時間以上加温することによりジチオカルバメート系農薬を分解し、生成した二硫化炭素をHS-GC-MS法により測定する。
本資料では、近年のヘリウム供給不足や価格高騰を背景として、窒素をキャリアガスに用い、HS-GC-MS法による二硫化炭素の定量性について確認したので、その結果を報告する。
2. 実験
ヘッドスペース用バイアルに3gの塩化ナトリウムと精製水10mLを量り入れ、二硫化炭素標準液を濃度0.05, 0.1, 0.2, 0.5, 1, 2, 5, 10µg/Lとなるよう添加し調整した。各測定試料には、内部標準物質として、フルオロベンゼンを5µg/Lの濃度になるよう添加し、密栓後、100℃で1時間加熱し測定試料とした。測定には、ヘッドスペースオートサンプラーMS-62071STRAPおよび、JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta(日本電子製)を用いた。測定条件を表1に示す。
表1 測定条件

3. 測定結果
図1に二硫化炭素0.05µg/Lの抽出イオンクロマトグラム(EIC)を示し、連続測定(n₌5)における定量値の変動係数(CV%)を表2に示す。下限値である0.05µg/Lにおいても十分な感度および良好な再現性が得られた。また、各標準試料を測定して作成した検量線(0.05~10µg/L)を図2に示す。検量線の直線性は良好であり、決定係数 (R2) が0.999以上を示した。
図1 二硫化炭素のEIC(0.05 µg/L)
表2 二硫化炭素の変動係数(C.V.)(0.05 ppb)
図2 二硫化炭素の検量線
4. 結論
キャリアガスに窒素を用いたHS-GC-MS法により二硫化炭素の測定を行った結果、下限値濃度における感度および検量線の直線性のいずれにおいても良好な結果が得られた。本法は、キャリアガスに窒素を用いた場合でも、ジチオカルバメート系農薬の定量分析に十分適用可能であることが確認できた。
