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蛍光X線分析(XRF)の原理

蛍光X線分析(XRF)とは

JSX-1000S エネルギー分散型蛍光X線分析装置

蛍光X線分析は"固体・粉末・液体・薄膜など様々な試料が分析可能、標準試料無しに定量分析が可能"といった多くの特長を持ち、しかも前処理(サンプリング)が容易なことから、"誰でも簡単に元素分析ができる"として、非常に幅広い分野で利用されています。

蛍光X線分析の原理

物質とX線の相互作用

X線は光と同じく電磁波の一種です。可視光の波長は400~800nmですが、X線の波長はもっと短く(エネルギーが高く)0.001nm~10nmであり、透過力が強いことが知られています。

物質とX線の相互作用とそれを利用した種々の分析法を図1に示します。これらの相互作用は物質の状態を知る重要な手がかりになるもので、最も身近なものとしては透過X線を利用した医療用レントゲン写真がよく知られています。

図1 X線と物質の相互作用とそれを利用した分析法

図1 X線と物質の相互作用とそれを利用した分析法

蛍光X線分析法

物質にX線を照射すると、物質を構成する元素固有のエネルギー(波長)を持つ蛍光X線(特性X線)が発生します。この蛍光X線のエネルギーを測定すると含有されている元素が分かり(定性分析)、各元素の蛍光X線の強さから濃度を計算する(定量分析)ことができます。このように未知の物質にX線を照射し、そこから発生する蛍光X線を測定することで、物質の定性あるいは定量分析を行なう方法を蛍光X線分析法といいます。

蛍光X線分析法の方式には、分光結晶を用いた波長分散型(WDXRF)と半導体検出器(EDS)を用いたエネルギー分散型(EDXRF)があります。

波長分散型(WDXRF)とエネルギー分散型(EDXRF)の違い

波長分散型装置(WDXRF)の特徴は、高感度,高精度,高分解能,高再現性です。エネルギー分散型装置(EDXRF)よりも1桁高い感度、精度が期待できます。これらの特徴は、高出力のX線管球(3~4 kW)とその冷却装置、複雑な動きをするゴニオメータ、分光結晶や検出器の交換機構などによって維持されています。当然、装置は大型化し構造は複雑で、高価になります。試料表面は平面が要求され、分析領域は数mmから30mm程度、同一形状のものをどんどん測定する工程管理向きと言えます。 エネルギー分散型装置(EDXRF)の特徴は、構造が簡単で低価格であること、幅広い試料への対応ができること、誰にも簡単に使えることです。X線管球は小型(数十W)で、空冷ですし、EDS(半導体検出器)単体で分光するために複雑な分光部がありません。試料は凸凹や不定形を苦にせず、大きな試料や微小部の分析が可能です。それぞれの特徴を 図2 に示しますが、大掛かりな設備である WDXRF と小型で簡単な EDXRF というイメージがあります。

図2 波長分散型(WDXRF)とエネルギー分散型(EDXRF)の比較

図2 波長分散型(WDXRF)とエネルギー分散型(EDXRF)の比較

波長分散型 (WDXRF)

長所: 高感度、高分解能
高精度、高再現性
短所: 複雑で大がかり、高価
試料は平板に限定

エネルギー分散型 (EDXRF)

長所: 簡単操作、小型、安価
試料形状の自由度大
短所: 低分解能(ピークの重なり)
要液体窒素など冷却機構

固体/粉末/液体試料のサンプリング

EDXRF の特長の一つにサンプリングの容易さがあります。以下に固体、粉末、液体試料に関するサンプリングについて説明します。

固体試料のサンプリング

固体試料はX線照射位置に載せるだけで分析ができます。小さな試料の場合は専用のセルを用いることで簡単に試料のセッテングができます。図3は固体試料のサンプリング法を簡単に示したものです。

図3 固体試料のサンプリング

図3 固体試料のサンプリング

粉末試料のサンプリング(岩石、土壌、焼却灰など

粉末試料は加圧整形器でペレットを作成して分析する方法が一般的です。簡易的には専用のセルに粉末を満たすことで分析できます。 図4は粉末試料のサンプリング法を簡単に示したものです。

図4 粉末試料のサンプリング

図4 粉末試料のサンプリング

液体試料のサンプリング

液体試料は専用セルを用い、そこに液体を満たして分析します。また、液体をフィルタ上に滴下し乾燥させて分析する方法もあります。 図5は液体試料のサンプリング法を簡単に示したものです。

図5 液体試料のサンプリング

図5 液体試料のサンプリング

FP(ファンダメンタル・パラメータ)定量法による定量分析

EDXRF装置では、FP定量法という理論計算法を採用しており、そのため未知試料の測定を実施するときに標準試料がなくても簡単に定量分析ができます。

FP定量法では、試料が均一であること、試料が十分に大きく厚いこと、全元素を定量(トータル100%)することを前提としております。当然、試料もその前提条件を満足していなければなりませんので注意が必要です。

FP定量法のフロー図を図6に示します。

図6 FP定量法のフロー図

図6 FP定量法のフロー図

FP定量法の流れ

まず未知試料を測定して測定強度を得る。
試料の初期濃度を仮定してFP法で計算強度を得る。
測定強度と計算強度を比較する。
測定強度と計算強度が合致する方向に推定濃度を変更する。
新しい推定濃度でFP法を用いて新しい計算強度を得る。
3 ~ 5を繰り返す。
測定濃度と計算濃度が合致したときの推定濃度が分析結果となる。

薄膜材料の膜厚分析

薄膜試料の場合、膜の構成元素のX線強度と膜厚の間には正の相関がありますので、薄膜の表面側からX線を照射して膜の構成元素のX線強度を測定することにより、膜厚を非破壊で分析することができます。

単層膜では検量線法で分析できますが、検量線法では、膜の種類ごとに標準試料の準備が必要です。薄膜FP定量法を用いると、単層膜の分析はもとより、最大5層の多層薄膜の各層の厚みと組成を標準試料なしに分析できますので、非常に便利です。図7に薄膜FP法の模式図を、図8にAu/Ni/Cu 膜の測定例を示します。

薄膜FP(ファンダメンタル・パラメータ)法

非破壊で薄膜の厚みと組成を同時分析
最大5層、各層は20成分まで
膜厚は約10nm~10μm程度(元素によって異なる)
標準試料は不要(理論計算)
膜の積層順、膜の成分、密度の情報が必要

図7 薄膜FP法の模式図

図7 薄膜FP法の模式図

図8 薄膜FP法による Au/Ni/Cu 膜の測定

図8 薄膜FP法による Au/Ni/Cu 膜の測定

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