熱重量分析と質量分析の融合
TG-MSはTGで発生したガスをリアルタイムにMSに導入し、TGとMSで同時分析するシステムです。
一度の測定でTG/DTA情報に加えて、TGのみでは得られない発生ガスの定性情報が得られます。汎用的な発生ガス分析は、四重極質量分析計 (QMS) と接続することで行うことができます。
さらに飛行時間質量分析計 (TOFMS) と接続することで、TG-QMSでは観測できない高質量成分測定や精密質量測定による未知成分解析などを実現するハイエンドなシステムです。
特長
TG-MSシステム例
GC-QMS
JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta
(日本電子製)
TG/DTA
STA 2500 Regulus
(Netzsch社製)
GC-TOFMS
JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha
(日本電子製)
TG/DTA/DSC
STA449 Jupiter
(Netzsch社製)
TG-QMSで広がる熱分析の世界
TG-QMSの特長
大型四重極による広いダイナミックレンジと長期安定した測定
大排気量による大量ガス導入時での高感度測定
ソフトイオン化法による分子量情報の取得
水素 (m/z 2) を測定可能
低真空フィラメントによる酸素存在下での測定
GC-MSとしても活用可能
TG-QMSのアプリケーション
光イオン化 (PI) 法にポリスチレンの熱挙動分析
ポリスチレン (試料重量10mg) をヘリウム雰囲気下でTG分析した結果、350°C付近より始まる重量減少と共にスチレンの熱分解挙動が確認できました。
このとき、PI法を用いることで、ポリスチレンの6量体まで分子イオンを確認することができました。同時発生する熱分解生成物であっても、PI法により分子イオンでの確認を行うことが可能です。
ポリスチレンの酸素雰囲気下における発生ガス分析 (MSTips No.320)
低真空用フィラメントを使用することで、酸素雰囲気下においても断線することなく安定した測定が可能です。
酸素濃度の上昇に伴い、ポリスチレンの熱分解生成物であるスチレンの酸化物と推察されるベンズアルデヒドの発生量が増加することが観測されました。
TG-MSによりアセチルサリチル酸粉末の熱挙動を測定した結果、120°Cまでは安定ですが、それより高い温度では気化 (Peak①) や重合化 (Peak②) などの変化が生じていることが推察されました。
医薬品の熱的安定性を評価することができるだけでなく、発生ガス種を定性分析することにより、測定試料の熱挙動を理解する上で重要な情報の取得が可能です。
合成高分子や機能性材料などの熱分析に答えを出せるハイエンドTG-TOFMS
TG-TOFMSの特長
広い質量範囲に渡る成分検出
高質量分解能による成分分離
高質量精度による成分同定
ソフトイオン化法による分子組成式推定
低真空フィラメントによる酸素存在下での測定
GC-MSとしても活用可能
TG-TOFMSのアプリケーション
TG曲線中に示した青矢印位置のEIマススペクトル
フッ素樹脂由来の繰り返し単位をもつ高質量イオン (m/z 2,500付近まで) が多数観測されました。TG-TOFMSは測定可能な質量範囲が通常のTG-QMSよりも広く、オリゴマー領域の合成高分子の測定に使用できることが示されました。
Mass | Formula | Calculated Mass | Mass Error[mDa] | DBE |
---|---|---|---|---|
166.0625 | C9H10O3 | 166.0625 | 0.1 | 5 |
222.1250 | C13H18O3 | 222.1251 | -0.1 | 5 |
278.1875 | C17H26O3 | 278.1877 | -0.1 | 5 |
EI, PIマススペクトルとPI精密質量解析結果 (図中★印)
PIマススペクトルで観測されたm/z 166、222、278は精密質量解析の結果から、酸化防止剤の主構造の一部分が外れて低分子化した構造を有していると推測しました。
クロマトグラム分離がないTG-MSにおいては、ソフトイオン化法とTOFMSの特長である精密質量解析を組み合わせることで、同時に観測される複数成分の定性分析を行えます。合成高分子の母材や添加剤などの詳細な熱分析・解析を行う上で、TG-TOFMSは強力な分析ツールになると考えられます。
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アプリケーション
TG-TOFMSに関するアプリケーション
GC-QMS Application: 窒素キャリアガスを使用した熱分析ソリューション② ~TG-MS法による天然ゴムとポリイソプレンゴムの比較分析~
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