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msFineAnalysis AIを用いた半導体用溶媒中不純物の定性分析 [GC-TOFMS Application]

MSTips No.434

はじめに

半導体デバイスの信頼性はシリコンウェハーの清浄度に依存しているため、清浄液中の不純物による汚染を確実に防ぐことが不可欠である。清浄液の高純度化工程を効率よく行うには除去対象となる不純物の化学成分を明らかにすることが重要であり、その手法としてガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)がよく使用されている。
さらに近年では、GC-高分解能質量分析計(GC-HRMS)による精密質量分析が行われるだけでなく、電子イオン化法(EI)マススペクトルのNISTデータベース検索およびソフトイオン化法(SI)を用いた分子イオンの把握により確度の高い定性解析も行われている。一方、精密質量分析から得られるデータの情報量は多く、化合物の特定にはMSデータ解析のノウハウと膨大な解析時間が必要となる。
JEOLが開発したソフトウエア、msFineAnalysis AIはEIおよびSIの両方のGC-HRMSデータに対して、解析時間を短縮化でき、かつ化学組成の解析および化学構造の予測を行うことができる。本アプリケーションノートでは、ウェハー表面の清浄液として使用されている酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル(PGMEA)中の不純物成分の定性分析をmsFineAnalysis AIの解析事例として報告する。

実験

市販のPGMEA(≥99.5%)をサンプルとした。PGMEAに類似した高極性成分が不純物成分と予想されるため、GCカラムにはRtx-BAC PLUS1を用いた。イオン化法はEI法およびSIとしてFI(Field Ionization)法を用い、解析にはmsFineAnalysis AIを用いた。測定における測定条件の詳細をTable 1に示す。

結果と考察

EIおよびFIのトータルイオンカレントクロマトグラム(TICCs)をFigure 1に示す。空気およびPGMEA以外に不純物と考えられる12成分が検出された。空気および水以外の成分は、EIおよびFIの両方のTICCsから確認された。解析過程では、分子イオンから推定された組成式とNISTデータベース検索結果の推定化合物が一致しない成分が散見された。
しかしながら、msFineAnalysis AIはNISTデータベースだけではなく化合物構造からAI予測されたEIマススペクトルのデータベースも有している。
そのAIデータベースにより、フラグメントイオンパターンがよく一致し、かつ分子イオンから推定された組成式を有する化合物を解析結果として図中に示した。
PGMEAに混入しやすい水分子、およびPGMEAの合成原料として用いられている1-methoxypropan-2-ol[1]が不純物成分として確認された。
また、PGMEAの構造異性体である2-methoxypropyl acetateも不純物成分として確認された。

 
 

Table 1.  Measurement and analysis conditions

 

Figure 1. TICCs for ionization techniques EI and FI.

 

Figure 2. EI and FI mass spectra of retention time 6.61 minutes component
Upper: EI, Lower: FI.

 

Figure 1中にで示したリテンションタイム6.61分の成分に着目して、マススペクトルおよび化学構造の予測結果をFigure 2とFigure 3にそれぞれ示す。
Figure 2のEIマススペクトルでは分子イオンが検出されておらず、分子イオンはFIマススペクトルから検出されており、ソフトイオン化を併用する重要性を示唆している。検出された分子イオンの精密質量から化学組成はC8H18O3と推定された。データベース検索では、類似度750以上を示す化合物は得られなかった。
しかしながら、Figure 3に示すAI structural analysisでは、C8H18O3の化学組成を有しており、かつAI予測されたEIフラグメントイオンパターンが実測EIフラグメントイオンパターンとよく一致する化合物として3-(3-hydroxybutan-2-yloxy)butan-2-olが推定された。

 

Figure 3.  AI Structural analysis results of retention time 6.61 minutes component.

まとめ

msFineAnalysis AIは時間と労力を軽減できるだけでなく、化学組成の推定および化学構造を予測できる高度な定性分析ツールであることを本アプリケーションノートで示した。PGMEAに限らない有機溶媒中不純物の定性分析のほか、半導体製品の洗浄前後におけるROSEテスト溶液の測定により半導体表面の有機汚染成分の定性分析に対しても、本システムでの運用が期待できる。

参考文献

 [1] Arif Hussain, Yus Donald Chaniago, Amjad Riaz, Moonyong Lee,. Ind. Eng. Chem. Res. 2019, 58, 6, 2246−2257.
DOI: 10.1021/acs.iecr.8b04052

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