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JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaを用いた電界脱離イオン化 (FD) 法によるポリエチレンイミンの測定 [GC-TOFMS Application]

MSTips No. 447

はじめに

電界脱離イオン化 (Field Desorption ionization: FD) 法は、試料を塗布したエミッターと高電圧を印加した電極の間で生じる高電界におけるトンネル効果を利用したイオン化法である。イオン化の際に試料に与える内部エネルギーが少なくフラグメンテーションが起こりにくいことから、分子量情報のみを与えるソフトなイオン化法として知られる。また、測定の際は試料を塗布したエミッターを専用のプローブに取り付け、質量分析計のイオン源に直接導入するためGCを介す必要がない。そのため、GC-MSでは測定が困難な難揮発性化合物、極性化合物、熱不安定性化合物等についても測定が可能である。
FD法は飛行時間質量分析計 (TOFMS) と組み合わせることで、測定した化合物の分子式まで算出することができる。ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-AlphaにおけるFD法の概要やサンプリング手法についてはMSTips No. 355MSTips No. 403に記載があるので参照されたい。 本MSTipsでは、構造中にアミンを多く含む水溶性ポリマーであるポリエチレンイミンをJMS-T2000GCのFD法で分析した結果を報告する。

実験

試料には市販のポリエチレンイミンを使用した (Figure 1) 。ポリエチレンイミンは、10 mg/mLとなるようメタノールで調製した。調製した試料は2 µLエミッターに塗布し、測定に供した。測定には、ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計 JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaを使用した。イオン源はEI/FI/FD共用イオン源を使用し、イオン化法はFD法を用いた。その他の詳細な測定条件をTable 1に示す。ケンドリックマスディフェクト (KMD) 解析にはmsRepeatFinder (日本電子製) を用いた。

 

結果

Figure 2に今回取得したデータのTICCを示す。ポリエチレンイミン由来のピークが確認された。TICC上で青矢印で示した箇所において作成したマススペクトルをFigure 3に示す。マススペクトルからは43 u間隔のピークが検出され、精密質量解析からポリエチレンイミンのモノマーであるC2H5Nと推定された。

 

Figure 2 Total Ion Current Chromatogram

Figure 3 Mass Spectrum of Polyethylenimine

 

Figure 4は、Figure 3のマススペクトルをmsRepeatFinderを用いてBase unit 43.0428 (C2H5N)で展開したKMDプロットとマススペクトルである。KMDプロットにより、ポリエチレンイミンの末端基が異なると推定される4つのシリーズが確認できた。この中でマススペクトル上で強く観測されており、主要なシリーズであるシリーズA (青色) およびシリーズB (赤色) について、末端基の構造推定を行った結果をTable 2に示す。最も強く観測されているシリーズAは末端基がそれぞれHとNH2であると示唆された。また、シリーズBは環状構造であることが示唆された。シリーズAの20量体由来と推定されるm/z 878.87853の組成推定結果をFigure 5に示す。組成推定結果から、今回はポリエチレンイミンのプロトン付加分子が検出されていたことが分かった。さらに、質量誤差は0.72 mDaと算出され良好な精度で精密質量が得られていた。またシリーズCはシリーズBから水素2個、シリーズDは水素4個少ない組成が得られた。これらはシリーズBに環状構造もしくは末端に二重結合を1つないし2つ含む構造であると考えられる。
以上の結果より、ポリエチレンイミンのようなアミンを多く含む水溶性ポリマーにおいても、FD法であれば分子量情報を含むイオン(今回はプロトン付加分子)を観測でき、さらに組成式まで容易に算出できることが示された。

 

Figure 4 Mass Spectrum and KMD Plot

Table 2 Estimated Structures Result of End Groups

 

Figure 5 Elemental Composition Estimated Result of 20mer in Series A

結論

本MSTipsでは、構造中にアミンを多く含む水溶性ポリマーであるポリエチレンイミンをJMS-T2000GCのFD法で分析した結果を報告した。分析した結果、msRepeatFinderのKMDプロット作成機能により、主要なシリーズの末端基を推定することができた。さらに、分子量に関連するプロトン付加分子を観測することができ、さらに良好な精度で精密質量が得られることを確認できた。FD法が、高分子材料やGC-MSによる測定が困難なサンプルの測定に活用されることが期待される。

分野別ソリューション

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