msFineAnalysis AI Ver3によるGCxGCデータ解析 ③熱分解オイルの分析
MSTips No. 511
はじめに
定性解析ソフトウェアmsFineAnalysis AIは、EI (Electron Ionization) / SI (Soft Ionization) 統合解析とAI構造解析によりライブラリー未登録物質の自動構造解析が可能である。Ver3では新たに包括的二次元ガスクロマトグラフ(GCxGC)データ解析に対応した。MSTips 509では軽油分析を例にEI/SI統合解析の有用性を、MSTips 510ではポリマーの熱分解分析を例にAI構造解析の有用性を紹介した。本MSTipsでは熱分解オイル分析を例に、二次元クロマトグラムを用いたサンプル比較と差異ピークの確認手法について紹介する。熱分解オイルは廃棄されたプラスチックやゴム製品などから得られるオイルである。石油代替燃料やリサクルプラスチックの原料に利用され、サーキュラーエコノミーに関わる重要な技術の一つである。
実験
サンプルとなる熱分解オイルはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)のペレットを混合し、ヘリウム雰囲気下で500℃15分加熱して生成した。Figure 1に熱分解オイル生成の模式図および各ペレットの混合量を示す。生成された熱分解オイルはクロロホルムで洗い流して回収し、希釈された状態のまま1μLをGCに注入した。分析条件の詳細をTable 1に示す。

Figure 1 熱分解オイル作製の模式図およびポリマーペレットの混合量
Table 1 分析条件の詳細


結果
Figure 2に熱分解オイル② (PE/PP)および④ (PE/PP/PVC)の二次元クロマトグラムを示す。主成分であるPE/PP熱分解物に加え、微量成分であるPVC熱分解物のナフタレン、アントラセン等も二次元クロマトグラムでは容易に確認することができた。


Figure 2 熱分解オイル②、④の二次元クロマトグラム
Figure 3に熱分解オイル①(PE)、②(PE/PP)、③(PP)の二次元クロマトグラムの拡大図を示す。今回使用した熱分解オイルは素材ポリマーが3種までであったが、それでも検出されたピーク数は200超となった。GCxGC-MS測定の結果得られる二次元クロマトグラムではこれら大量のピークを分離検出でき、またピーク配置から構造を容易に推測するこができた。

Figure 3 熱分解オイル①、②、③の二次元クロマトグラム(拡大)
まとめ
msFineAnalysis AI Ver3では新たにGCxGCデータ解析に対応、熱分解オイルのような複雑なサンプルの定性情報を視覚化し、複数のサンプル比較も迅速に行うことが可能となった。
謝辞
本MSTipsで使用した熱分解オイルを提供していただいた東北大学 熊谷将吾准教授、吉岡敏明教授に深く感謝申し上げます。
