サステナブルマテリアルの工業的利用に向けた特性評価
~カーボンニュートラル実現に向けた漆の挑戦~
公開日: 2022/10/20
2015 年にSDGs (Sustainable Development Goals) が国連で決議され、持続可能な社会を目指した時代の潮流はその勢いを増しています。欧州ではESG (Environment, Society and Governance) 投資の後押しもあってバイオエコノミーを基軸とする再生可能な生物資源の利用が加速しています。また、日本では2020年の菅総理によるカーボンニュートラル宣言のもと、持続可能性を支える技術の開発・普及が推し進められています。
この様な背景から本ウェビナーでは、近年サステナブルマテリアルとして研究が加速している"バイオポリマー・漆"を多面的に解析し、工業的利用に向けた特性評価法を紹介します。
本セミナーは、WEB上で開催されます。WEBに接続できる環境であれば、パソコンからだけでなく、スマートフォンやタブレットからも参加することができます。
皆さまのご参加をお待ちしております。
"このウェビナーから学べること"
サステナブルマテリアルの工業的利用方法
NMR、MS、IRを用いた未知成分の同定法
XPSを用いた組成分析、化学結合状態分析
SEM、TG/MS、PyGC/MS、ESRを用いた熱劣化解析
TEM、MS、NMRを用いた微量分析
"参加いただきたいお客様"
サステナブルマテリアルの研究開発をされている方、今後される予定の方
未知化合物の同定法に興味のある方
有機材料の分析をされている方
分析サービスに携わる方
開催日/詳細
- 2022年12月2日 (金) 15:00~17:00
講演後に質疑応答の時間はありません。 - 発表資料
発表資料の配布はありません。参考資料の配布がございます。 - 動画掲載
開催後、ホームページに発表動画の掲載を行う予定はありません。
プログラム
概要 / 時間 | 演題 / 詳細 | 講演者 |
---|---|---|
初めに: (約3分) |
本ウェビナー趣旨説明 本ウェビナーでは初めに漆の工業利用について宮腰先生にご講演頂いた後、弊社社員より漆の特性評価法を紹介いたします。特性評価法では、モノマー成分分析、硬化過程解析、熱劣化解析、漆膜中の微量成分分析について解説致します。 |
新村典康 日本電子株式会社 アプリケーション統括室 |
特別講演: (約30分) |
漆の特性とハイブリッド化及びナノ化改質 漆はウルシの木を植え、育て、それから得られる樹液を塗料や接着剤、塑形材に用いる。漆液を用いた蒔絵や螺鈿は優雅で美しく、日本を代表する美術工芸品になっている。植物資源の漆を利用することはグリーンケミストリーやSDGsに関連して見直されている。本講演では、漆の特性と、ハイブリッド技術やナノ化して漆を利用する工業用塗料や工業意匠への新しい応用を概説する。 |
宮腰 哲雄 様 明治大学名誉教授 明治大学研究知財戦略機構 研究推進員 |
講演1: (約10分) |
モノマー成分の分析 ~ FT-IR, MSの応用 ~ 今回、漆のモノマー成分を単離し同定しました。ここでは一例として飽和成分である3-pentadecylcatecholの同定方法を紹介いたします。初めにFT-IRによる官能基の解析を行った後、質量分析法 (MS)による構造解析を行いました。MS分析の解説ではイオン化法の紹介とマススペクトルの解析方法も解説致します。 【関連製品】 JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta ガスクロマトグラフ四重極質量分析計 |
新村典康 日本電子株式会社 アプリケーション統括室 |
講演2: (約30分) |
モノマー成分の分析 ~ NMRの応用 ~ 漆のモノマー成分の一つである、3-pentadecylcatechol (ウルシオール飽和成分) のNMR解析事例の紹介をいたします。FT-IRによる官能基同定、MSによる分子量情報を基に、NMR測定によって得られる情報である、化学シフト、信号積分値、J結合などを解析することで炭素の骨格構造の推定を行いました。NMRでの構造解析ではプロトン数には1H-NMR、カーボン数には13C-NMR、そして原子団の判定にはDEPT135の測定を行いました。また、2次元NMRでは、HMQC、HSQCを用いてプロトンとカーボンのつながりを明らかにしました。更に、COSYにて1Hのつながりを解析しました。最後に、HMBCを用いてプロトンのつながりのないベンゼン環とアルキル鎖の付け根のつながりを確認しました。 【関連製品】 NMR spectrometer ECZ Luminous™ (JNM-ECZLシリーズ) FT NMR装置 JNM-ECZS series FT NMR装置 (400MHz) JNM-ECZR series FT NMR装置 (500、600、700、800MHz) |
鴨 修 日本電子株式会社 NM事業ユニット NMアプリケーション部 |
講演3: (約10分) |
硬化過程解析 ~ XPSの応用 ~ 漆の硬化 (成膜) 過程を鉛筆法とXPSを用いて分析しました。鉛筆法により成膜から50日後には漆膜の硬度が7Hまで硬化することが分かりました。また、XPSによる組成分析と化学結合状態分析によりウルシオール (漆のモノマー成分) の酸化重合反応がかなり進行していることが明らかになりました。 【関連製品】 JPS-9030 光電子分光装置(XPS) |
新村 典康 日本電子株式会社 アプリケーション統括室 |
講演4: (約10分) |
熱劣化解析 ~ SEM, TG/MS, PyGC/MSの応用 ~ 漆膜の熱劣化過程をSEM, TG/MS, PyGC/MSを用いて解析しました。SEMによる形態観察から加熱により漆膜表面に細孔が多数生じることが分かりました。一方、TG/MSにより漆膜は200~400℃で徐々に重量が減少し始め、400~500℃で急激に減少することが判明しました。また、PyGC/MS により糖タンパク質やウルシオールポリマーの熱分解生成物が検出されました。 【関連製品】 JSM-IT800 ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡 JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta ガスクロマトグラフ四重極質量分析計 |
新村 典康 日本電子株式会社 アプリケーション統括室 |
講演5: (約15分) |
熱劣化解析 ~ ESRの応用 ~ 試料中のラジカルを前処理無しに観測できるESRを用いて、漆膜加熱時におけるラジカルの温度依存性を評価しました。試料を50℃から300℃まで段階的に加熱すると、室温ではphenoxyl radicalを示していたESRスペクトルのg値が、50℃でalkoxyl radical、200℃で主鎖切断が推察されるalkyl radicalを示す値に変化しました。さらに、ラジカル量も200℃から300℃にかけて増加することが明らかになり、200℃からの熱分解開始が示唆されました。これらの結果は前述したTG/MS、PyGC/MSの結果と良い一致を示しています。 【関連製品】 JES-X3 Series ESR装置 |
中井 由美 日本電子株式会社 NM事業ユニット |
講演6: (約15分) |
漆膜中の微量成分 (多糖) 分析 ~ TEM, Py/MS, 固体NMRの応用 ~ 漆膜に微量に含まれている多糖をTEM, Py/MS, 固体NMRを用いて解析しました。TEMによる漆膜切片の形態観察から気泡中に多糖が析出していることが確認されました。また、Py/MS分析により多糖の熱分解生成物を検出することができました。ここでは、ハードイオン化法であるEIとソフトイオン化法であるFIを用いて測定を行いましたので、それぞれの特徴も解説致します。更に、固体NMR分析により多糖成分に特徴的なピーク(COOH, C1~C6)を確認することができました。 【関連製品】 JEM-1400Flash 電子顕微鏡 JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta ガスクロマトグラフ四重極質量分析計 JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha 高性能ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計 NMR spectrometer ECZ Luminous™ (JNM-ECZLシリーズ) FT NMR装置 JNM-ECZS series FT NMR装置 (400MHz) JNM-ECZR series FT NMR装置 (500、600、700、800MHz) |
新村 典康 日本電子株式会社 アプリケーション統括室 |
参加費
無料 (お早目にお申込みください。)
お申し込み方法
下記よりお申し込みください。
登録・参加方法の詳細はPDFをご覧ください。
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