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マイクロチャンバー及び加熱脱着GC-MSを用いた大豆ミート食品の香気成分分析

MSTips No. 504

1. 概要

植物性代替肉の課題の一つは、動物性食肉の風味の再現であり、香りはその風味に大きく影響する。特に、大豆ミート食品においては大豆臭の低減が課題であり、試料の香気成分中に含まれる微量な大豆臭成分の把握は重要となる。
マイクロチャンバー/加熱抽出装置は、加熱したチャンバー内に設置した試料の揮発性有機化合物を吸着剤入りのサンプルチューブに通気させて捕集する装置である。試料はチャンバーに直接投入でき、幅広い試料量に設定可能である。また、加熱脱着装置(TD)は、サンプルチューブを加熱し、脱離した気体をGCに導入する前処理装置である。サンプルチューブから脱離した気体は冷却したフォーカシングトラップに捕集され、続いてフォーカシングトラップの高速加熱により脱離させる。この2段階の加熱脱着により高感度な分析が可能となる。これらの手法は、揮発性有機化合物を効率的に捕集できるため、プラスチック製品、木製品、繊維製品、食品等の幅広い分野で製品評価に採用されている。(MSTips No.435, 436, 459
今回、マイクロチャンバーおよびTD-GC-MS法を用いて大豆ミート食品の香気成分を分析した結果、本手法の有用性が示されたので報告する。

 

µ-CTE250

画像提供:(株)ENVサイエンストレーディング

TD100-Xr,
JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

2. 実験

Figure 1にサンプリングの概略図を示す。試料には、市販の大豆ミート食品(ハンバーグ)を10 g用いた。ハンバーグは粗めに刻み、アルミホイルを敷いたマイクロチャンバー(µ-CTE250, MARKES社製)に設置した。チャンバー温度は50 ℃に設定し、15 分間サンプルチューブに通気させて揮発成分を捕集した。測定には、前処理装置として加熱脱着装置(TD100-Xr, MARKES社製)を装着したGC-MS(JMS-Q1600GC, JEOL製)を使用した。イオン化法はEI法およびソフトイオン化(SI)法として光イオン化(PI)法を用いた。得られたデータの解析は、統合解析1)ソフトウェア(msFineAnalysis iQ, JEOL製)を用いた。Table 1に測定条件を示す。

 

Figure 1 Sampling process

Table 1 Measurement Condition

3. 測定結果

3.1 TICCとデコンボリューションピーク

Figure 2にTD-GC-MS測定のTICクロマトグラム(黒色実線)およびデコンボリューションピーク(灰色)を示す。
msFineAnalysis iQのデコンボリューションピーク検出機能では、TICC上で確認できない微量成分や、1成分のように見えるピーク中の複数成分を検出することが可能である。本機能により、今回の測定データから多数のピークが検出された。そのうち、相対強度上位50成分(ID:[001]~[050])について統合解析を実施したところ、玉葱の香気成分として知られるDimethyl disulfideや大豆臭に寄与する成分であるHexanal、ハンバーグの調味料の一つであるナツメグの香気成分として知られる 4-Terpineolなどのハンバーグ由来成分であることが確認された。以上より、TD-GC-MS法により、食品の香気成分分析が可能であることが示された。

 

Figure 2 TIC chromatogram and Deconvolution peaks

3.2 統合解析結果

Table 2にmsFineAnalysis iQによる50 ピーク(ID:[001]~[050])の統合解析結果を示す。統合解析では、EI測定データのデータベース検索に加え、EIおよびSI測定における分子イオンの確認や、同位体マッチングスコア、リテンションインデックス(RI)などの同定機能を用いた総合的な解析により、高い確度で定性結果が得られる。例えば、ピーク[015]は統合解析の結果、2-Heptanoneと推定された。Figure 3にマススペクトルを示す。類似度(マッチファクター:Max 999)は969と良好であった。EIおよびPI測定のマススペクトルから分子イオンピークが検出されており、PI測定ではベースピークとして検出された。さらに、Figure 4に示す同位体パターン解析では、実測値と理論値の一致度のスコア(同位体マッチングスコア:Max1.00)は0.99と良好であった。また、本ピークの実測RI値とデータベースRI値の差(ΔRI:30以内で良好)についても6 [iu]と良好であった。このように、統合解析により、ハンバーグ由来と推定される複数の香気成分が高い確度で確認された。

 

Table 2 msFineAnalysis iQ results (ID:[001]~[016])

 

Table 2 msFineAnalysis iQ results (ID:[017]~[050])

 

Figure 3 Mass spectra of ID:[015]

Figure 4 Isotope pattern matching results
for ID:[015] molecular ion

まとめ

マイクロチャンバーおよびTD-GC-MS法を用いて大豆ミート食品(ハンバーグ)の香気成分を分析した。その結果、ハンバーグ由来の香気成分が複数検出され、本手法による食品香気成分分析の有用性が示された。

参考文献

1) M. Ubukata et al, Rapid Commun Mass Spectrom., 34 (2020). DOI: 10.1002/rcm.8820

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