ヘリウムガスの供給不足への対策とご提案
GC-MS用キャリアガス・ヘリウムガスの供給不足に対するソリューション
ヘリウムガスの供給不足問題に伴い、その対策を検討する必要が生じています。
弊社では、弊社 GC-MS をお使いの皆様に、キャリアガス (ヘリウムガス) の節約方法や、代替ガスによる測定データ等、ヘリウム供給不足問題に対する対策とご提案を以下にお知らせしてまいります。
代替ガスを利用した水質分析アプリケーション
弊社では、飲料水・排出水・土壌・地下水といった水質分析全般を対象に、水素・窒素をヘリウムの代替ガスとして利用するための各種アプリケーションを提供しています。
飲料水水質検査に係るアプリケーション
揮発性有機化合物
別表第14, PT-GC-MS法による一斉分析法 ( 水素・ 窒素 )
別表第15, HS-GC-MS法による一斉分析法 ( 水素・ 窒素 )
ハロ酢酸類
別表第17, 溶媒抽出―誘導体化―GC-MS法による一斉分析法 ( 窒素 )
ホルムアルデヒド
別表第19, 溶媒抽出―誘導体化―GC-MS法 ( 窒素 )
カビ臭物質(2-メチルイソボルネオール, ジェオスミン)
別表第25, PT-GC-MS法による一斉分析法 ( 水素 )
別表第26, HS-GC-MS法による一斉分析法 ( 水素・ 窒素 )
フェノール類
別表第29, 固相抽出―誘導体化―GC-MS法 ( 窒素 )
フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)
溶媒抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法 (水素・ 窒素 )
ジクロロアセトニトリルおよび抱水クロラール
別添方法3, 溶媒抽出―ガスクロマトグラフ―質量分析計による一斉分析法(水素・ 窒素 )
排出水・土壌・地下水に係る検査に係るアプリケーション
揮発性有機化合物
JIS K 0125, 5.1 PT-GC-MS法 ( 水素・ 窒素 )
JIS K 0125, 5.2 HS-GC-MS法 ( 窒素 )
農薬類(シマジン・チオベンカルブ)
昭和46年環境庁告示第59号, 付表6, 溶媒抽出又は固相抽出によるGC-MS法 ( 水素・窒素 )
RoHS指令に係るアプリケーション
フタル酸エステル類
IEC62321-8, PY/TD-GC-MS ( 窒素 )
食品中残留農薬分析でお困りの方へ
農薬類
GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物・畜水産物)( 水素 )
代替ガスを利用した定性分析アプリケーション
代替ガスを利用した定性分析を行う場合、水素ガスは水素による還元作用によってマススペクトルが変化する低下するリスクがあるため推奨されません。
一方、窒素は水素のようなマススペクトルの変化のリスクが低く、定性分析には最適な選択肢となります。
ヘリウムガスを節約する
測定中のキャリアガス消費量を削減する方法 ~JMS-TQ4000GC, JMS-Q1600GC, JMS-Q1500GC版~
ヘリウムガスを節約するためのご提案 ~JMS-T2000GC, JMS-T200GC版~
ヘリウムガスを節約するためのご提案 ~JMS-T100GC版~
窒素ガスのご使用について
窒素ガスは、その取扱いに関して危険性を伴うこともなく、ヘリウムの代替キャリガスとしては比較的容易に採用することができます。ただし、窒素ガスのキャリアガスとしての特性はヘリウムガスと大きく異なるため、条件設定等に関して注意が必要となります。
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キャリアガスとして窒素ガスを使用する際の注意点
- ヘリウムガスの代替キャリアガスとして窒素を使用する場合、その純度はヘリウムガスと同様に G1 クラス (純度 99.99995 vol.%) を使用し、更なる不純物除去のためフィルターや精製管の使用をお勧めしています。
- キャリアガスとして窒素を使用した場合、質量分析計での検出感度はヘリウムガスのそれに比べて低下することが知られています。
感度の低下の程度は測定対象化合物により異なりますが、約 1/20 程度であると言われています。 - 窒素をキャリアガスとして使用した場合、最適線速度は極端に遅く、一般的なキャピラリカラム (長さ 30m、内径 0.25mm、膜厚 0.25μm) を使用した場合には、最適線速度域での測定は困難となり、キャリアガス流量をヘリウムのそれと比べて大きく変更する必要があります。
そのため、測定対象化合物のリテンションタイムもヘリウムガスをキャリアガスとしていた場合とは大きく異なることから、測定条件・定量条件等の見直しが必要になります。
水素ガスのご使用について
弊社では安全性と簡便さを考慮し、ヘリウムの代替キャリアガスとして窒素を推奨していますが、装置、及び設置室環境を適切に整備し、十分な安全対策を講じて頂ければ水素ガスもキャリアガスとして使用することができます。一方で、弊社装置はいわゆる防爆対応ではありません。 水素ガスは酸素との混合により引火・爆発を起こす可能性の極めて高いガスですので、上述のように、装置そのもの及び設置環境の整備、および機器操作等を含め使用者様の責任において特段の注意の上での取り扱いをお願いいたします。
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キャリアガスとして水素ガスを使用する際の注意点
- 水素は4%以上の濃度で爆発の危険性のある気体です。キャリアガスとして水素ガスの使用については、キャリアガスの排気 (質量分析計からの真空排気を含む)・スプリットベントの排気など、すべての排気を確実に室外に排出・拡散されていること、水素ボンベや水素発生器を含む水素ガス源から装置までの配管や装置内部でのカラムの接続点などから水素の漏れがないこと、ならびに装置設置室環境に十分な換気設備が整えられていることを前提としています。
換気設備に問題があったり、配管等からの漏れがあるなどし、設置室の水素ガス濃度が一定レベルを超えた場合、弊社装置が稼働していない状態でも爆発の危険性があります。 - ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計 (GC-TOFMS) では、分析部であるフライト管容量が大きく、仮にこのフライト管に水素が充満するような状況が発生すると、爆発などの重篤な事態を引き起こす可能性があり、その可能性はガスクロマトグラフ四重極質量分析計 (GC-QMS) よりも高いと言えます。 そのような背景から、GC-TOFMS については窒素ガスを代替ガスとして使用することをお勧めしております。
仮に水素ガスを使用する場合は、上記の場合と同様、もしくは、より手厚い安全対策を講じた上での使用をお願いします。 - 水素ガスをキャリアガスと使用する場合は、99.9999%以上の純度のものを準備し、さらに精製管やフィルターで水分やハイドロカーボン等を除去することをお勧めします。
- 水素は還元性を有するため測定対象化合物を還元する可能性があります。その場合、マススペクトルのパターンに変化が生じたり、検出感度が変化する場合があります。
特に質量分析計のイオン源内で反応が生じた場合、水素が化学イオン化の試薬ガスとして作用し、H+付加イオンが検出される場合があります。
- 水素は4%以上の濃度で爆発の危険性のある気体です。キャリアガスとして水素ガスの使用については、キャリアガスの排気 (質量分析計からの真空排気を含む)・スプリットベントの排気など、すべての排気を確実に室外に排出・拡散されていること、水素ボンベや水素発生器を含む水素ガス源から装置までの配管や装置内部でのカラムの接続点などから水素の漏れがないこと、ならびに装置設置室環境に十分な換気設備が整えられていることを前提としています。