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異物分析の基本と装置の使い分け|XRF・SEM-EDSの活用事例もご紹介

異物とは...混入片だけでなく、キズ、汚れ、変色部、付着物などさまざま

異物分析は、単なるトラブル対応にとどまらず、製造工程の弱点や設計上の課題を可視化するための重要な取り組みです。

例えば、材料の劣化によって析出物が繰り返し発生している場合は、原料の選定や温度管理の見直しが必要になることがあります。また、設備由来の金属片が混入していたケースでは、摩耗部品の交換タイミングや保守体制の改善につながることもあります。
このように、異物分析の結果は原因究明だけでなく、工程改善や予防保全、再発防止に向けた取り組みにも活用されています。

本記事では、異物分析の基本的な進め方から異物分析手法の選び方、蛍光X線分析装置(XRF:X-ray Fluorescence Spectrometer)、走査電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDS)など代表的な装置の活用事例をわかりやすく解説します。

異物分析の一般的な流れ

初期観察 (目視・顕微鏡)

異物の色・形・質感を確認し、材質の仮説を立てます。
目視や光学顕微鏡、実体顕微鏡で凹凸や形状を把握します。異物が微小な場合や、表面形状をより詳しく確認する必要がある場合には、SEMによる観察を行います。

成分分析 (材質・構造の特定)

異物の成分を明らかにすることで、混入源の特定につなげます。
無機物にはXRFやSEM-EDS、有機物にはフーリエ変換赤外分光法(FT-IR:Fourier Transform Infrared Spectroscopy)やガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS:Gas Chromatograph-Mass Spectrometer)などを用います。
異物が複数の成分から構成されている場合や、1つの測定結果で判断が難しい場合には、複数の手法を組み合わせて総合的に判断します。

製造工程との照合

分析結果をもとに、製造記録や設備の使用履歴、使用された原材料のロット情報などと照らし合わせて異物の混入源を推定します。

原因特定と再発防止策の検討

異物の発生メカニズムを明らかにし、工程改善・保守体制の見直し・原材料変更などの対策を立案します。

異物の種類に応じた分析手法 (分析装置) の選び方

異物分析フローチャート

異物は初期観察後、以下の4つに分類し、それぞれ適切な分析手法を選択します。

固体片・粉末の異物 (例:金属片、ガラス片、樹脂片、包装材など)

〈Step1: 形状観察〉

まず光学顕微鏡やSEMによる形状観察を行います。特に微細な異物(0.1 mm以下)ではSEMが有効であり、二次電子像により表面の微細構造を把握するとともに、反射電子像による組成コントラストから、有機物か無機物かの大まかな仮説を立てることができます。

〈Step2: 成分分析〉

無機系と考えられる場合には、XRFにより試料全体の元素組成を把握し、必要に応じてSEM-EDSにより微小領域の局所的な元素分布や複合粒子の詳細構造を解析します。一方、有機系の異物では、FT-IRにより分子構造を解析し、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの材質を同定します。さらに、より詳細な成分情報や微量成分の解析が必要な場合には、GC-MSにより有機化合物の分離・同定を行います。

液状・粘性物の異物 (例:潤滑油、添加剤、接着剤など)

〈ステップ1:スクリーニング〉

潤滑油や添加剤、接着剤などの液状・粘性物では、まずXRFを用いたスクリーニングにより、金属元素や無機添加剤の有無を確認します。これにより、無機成分を含むかどうかを迅速に判断し、その後の分析方針を決定します。(装置によりCが検出可能な場合があります。)

〈ステップ2:有機分析〉

無機成分がほとんど検出されない場合は、有機成分が主体と考えられるため、成分の性質に応じて分析手法を選択します。揮発性の成分についてはGC-MSを用いて分析し、溶剤や低分子化合物の同定を行います。一方、非揮発性や熱に不安定な成分については液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS:Liquid Chromatograph-Mass Spectrometer)を用いることで、高分子化合物や極性物質の解析が可能です。

生物由来の異物 (例:毛髪、布片、昆虫、カビなど)

〈ステップ1:前処理〉

毛髪昆虫カビなどの生物由来異物では、必要に応じて培養や染色といった前処理を行い、観察しやすい状態に整えます。

〈ステップ2:観察〉


光学顕微鏡による全体観察に加え、SEMを用いて表面の微細構造を高倍率で観察します。例えば毛髪ではキューティクル構造、昆虫では外骨格の形態、カビでは菌糸や胞子の形状などから、種別や特徴の推定が可能です。
さらに詳細な内部構造の解析が必要な場合には、樹脂包埋超薄切片作製を行い、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって細胞内部や微細組織の構造を観察します。

表面汚染・付着物の異物 (例:洗浄残渣、摩耗由来の薄膜成分など)

〈ステップ1:スクリーニング〉

まず光学顕微鏡やSEMによって形状や分布を観察し、有機物か無機物かの仮説を立てます。

〈ステップ2:成分分析〉



一方、より表面に近いナノメートルオーダーの情報が必要な場合には、X線光電子分光装置(XPS)、オージェ電子分光装置(AES)、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)といった表面分析手法を用いることで、極微量の汚染物質や化学状態の評価を行います。

XRFとSEM-EDSの原理と特徴の違い

なかでもXRFとSEM-EDSは、異物分析において特に汎用性が高く、幅広い試料に対応できる代表的な装置です。ここからは、XRFとSEM-EDSについて、それぞれの特徴や使い分けのポイントを解説します。

XRF SEM-EDS
励起源 X線 電子線
検出可能元素 炭素 (C) 〜 ウラン (U) ベリリウム (Be) 〜 ウラン (U)
検出下限 0.0001 mass% (数 ppm) 0.1 mass%
測定可能試料 固体、液体 固体
得意な試料形状 平坦な試料 凹凸のある試料にも対応可能
分析領域
(面方向)
広領域
(mm オーダー)
微小領域
(µm オーダー)
分析領域
(深さ方向)
深い
(µm 〜 mm オーダー)
浅い
(数10 nm 〜 µm オーダー)

「森を知る」XRFは試料を広く深く分析できる

XRFによる電子基板の分析結果。薄膜FP法により、金めっき層の厚み44nm、Ni-Pめっき層の厚み6μmを測定。Ni-Pめっきの組成はNi 92 mass%、P 8 mass%

「木を知る」SEMは試料表面の微細形態と主要元素がわかる

SEMによるによる電子基板上の付着物の分析結果。EDS分析により、付着物からC、O、Clを多く検出し、有機由来の異物であることを確認。

XRFとSEM-EDSを組み合わせることで、広範なスクリーニングと精密な局所分析を効率よく行うことができ、異物の混入経路や発生原因の特定に必要な情報を網羅的に取得できます。

XRFとSEM-EDSを用いた異物分析の事例

食品の異物分析:XRF

パン、ソーセージに混入した異物を、XRFにより分析しました。異物を食品から取り出すことなく、そのまま測定し、迅速に成分を特定しました。

水道水中の異物分析:SEM-EDS

水道水のろ過フィルター上の異物を光学顕微鏡とSEM-EDSを用いて観察・分析しました。黄色異物からはAl、Si、S、Ca、Fe等が、白色異物からはSi、P、Ca、Fe等が検出されました。EDSマッピングにより各元素の分布状態も可視化しています。

樹脂表面における異物分析:XRFとSEM-EDSの併用

樹脂表面に付着した異物をXRFとSEM-EDSを併用して分析しました。

異物分析はここから
日本電子のスクリーニングソリューション

日本電子の蛍光X線分析装置

JSX-1000S エネルギー分散形蛍光X線分析装置 (XRF)

非破壊で異物の元素組成を迅速に把握できる蛍光X線分析装置です。
広範囲の元素を定性・定量分析できるため、異物の材質の特定や混入源の推定など、異物分析の初期スクリーニングに適しています。
また、材料判定プログラム「QBase」と連携することで、測定データと既知材料 (例:ステンレス、銅合金など) の類似性を数値的に評価することができ、異物の材質特定を効率的に行えます。

日本電子の卓上SEM

JCM-7000 NeoScope™ 卓上走査電子顕微鏡

小領域の元素分析 (EDS) を行える卓上走査電子顕微鏡です。
光学像からSEM像へのスムーズな切り替え (Zeromag)、リアルタイム元素分析 (Live Analysis)、三次元観察 (Live 3D) などの機能により、異物の形状・構造・成分を総合的に把握できます。
これにより、異物の種類特定や発生原因の調査に役立ちます。

まとめ

異物分析は、不良品の防止や品質管理にとどまらず、製造工程の見直しやトラブルの未然防止にもつながる重要な取り組みです。異物の形状や成分、分析目的に応じて適切な装置を選定することで、分析の精度や対応スピードを大きく高めることができます。

異物分析における装置選定に関するご相談ついては、ぜひお気軽にお問い合わせください。

装置の選定から導入後の運用まで、貴社の課題に合わせてご案内いたします。


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